きみに届けるシンフォニー
第一章 届けたい想い 5

作品に栞をはさむには、
ログイン または 会員登録 をする必要があります。

「寝落ちしたんだ」  拓人が苦笑すると、奏と修は朗らかに笑う。  神楽修はもう一人の幼馴染である。  保育園は違ったが、小学校で同じクラスになったのがきっかけで仲良くなり現在に至る。  修の家は神社で代々神主を務めており、彼自身も高校卒業後の進路は神主資格取得課程がある大学進学を志望していた。  髪を茶色に染め、校則ぎりぎりの着崩した制服は神職とはかけ離れているものの、修にとっては今しかできない自由だと拓人と奏は理解している。 「枝川が居眠りに気づいた顔ったらなかったぜ。うおい、マジかよって!」  気づかない訳ないかと拓人が落胆すると、調子づいた修が枝川のモノマネをはじめた。よく似ていたらしく奏は口元のえくぼを隠して控え目に笑う。 「枝川先生は居眠りは自己責任だから知らないって言ってるけど、たっくんの顧問だからそんなに怒らないと思うよ」 「そうそう、怒った感じじゃなかったぜ。あの顔は残念つーか、がっかりみたいな」  修が再びモノマネをするが、理由が失望なら拓人としては笑いごとではない。  幸い午後の部活動で顔を合わせるので、しっかり詫びておこうと心に留めおく。  ひとしきり笑ったところで修はぶっきらぼうに話しはじめた。 「部活終わったら、久々に三人で茶しない?」 「あ、それなら私、駅前の本屋さんに寄りたい」  拓人は一瞬迷ったが、二人の期待の眼差しに負けて承諾すると奏と修はハイタッチを交わした。  最近までアルバイト漬けで二人と過ごす時間をおろそかにしていたので、その埋め合わせの気持ちも後押しした。  部活後に昇降口で待ち合わせと決めた所で、帰りのホームルームを行おうと担任が教室にやって来た。  席に戻るよう二人を促し、拓人は机に広げたままだった授業ノートの下から作詞ノートがのぞいているのに気づいて肝を冷やす。ぎこちなくならないように、自然な動きでそそくさとバッグにしまい胸をなでおろすのだった。

応援コメント
0 / 500

コメントはまだありません