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 俺は、五年生の2学期の最後の方から学校に行かなくなった。行けなくなったのかな。 最初こそ、父親も学校に行けってうるさく言っていたが、次第に何も言わなくなって、終いにはいない子同然になっていた。俺は小学校に行かなくなって、何をしていたんだろう。本を読んでいた?テレビを見ていた?家にいたのは確かだ。 そのうち、桜が咲いた頃、先生が来るようになった。満島先生だ。宿題を持って、だから、先生のくれるプリントを俺はしていた。分数の掛け算、割り算なんかは中々、味があったが、先生が持ってきた六年生の教科書を熟読すれば何とかやっつける事が出来た。 そう言えば……それを、宿題を毎日先生に渡していたな。そして、その宿題をちゃんと添削して持ってきてくれていた。満島先生は。 すっかり忘れていた。 そんな感じで、中学も行かずじまいだ。当然、その上も同様だ。周りの奴らが高校に入る歳に、何とか拾われて、この風俗店の仕事に着いた。気が付きゃ、いつの間にか店長になり、客とキャストとの板挟みで苦しむ毎日を送っている。 先生はさっき後悔という言葉を使っていたが、そうだな、そう言う意味では俺も後悔している。あの時、まだ、学校に行かなくなった3か月くらいのあの日、六年生の担任の満島先生の手を取っていたら、その後の俺の人生はどう変わっていったのだろうか。 そして、今、俺の前であの日と同じように俺の前に現れて、手を差し伸べている。小学校に通う?そんな事をして、この俺の何が変わるというのか?  何も変わらないだろう。 だけど、差し伸べてくれる手がある事がどれほどありがたいか、あれから16年たった俺には痛いほどに理解できている。 先生、ありがとう。今度は先生の手を掴ませてもらうよ。 俺は、先生に感謝を表し、学校に行く事を約束した。 ……そして、先生が帰ると、 「ちょっと、店長。小学校に通うの?」 みやびさんが、早速、ことりちゃんから事のいきさつを聞きつけて、事務所へとやって来た。 「そうね。なんか、それも面白いかなって」 詳細は俺のデリケートな部分だ、省いておく。 「うちの子の使っていたジャージあげようか?」 いや、デカイ俺が子供の小さいお古を着れるわけねぇだろ。 ていうか、まじか?え?じゃあ、俺、ランドセル背負うの?

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