泣けないライオン
泣けないライオン

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ガオー ガオー ガオー 正直言えば飽きたよ…吠えんのも。 いつもオレさまは、ガオーしか言わない。たまにはガオー以外で鳴いてみたい。けれど奴らがそれを許しちゃくれない。ほらほらまたやって来たよ。あっちから… 小学生くらいの女の子とまだまだ若い世代の三人家族が目を輝かせながら、ライオンの檻の方へとやって来た。 「みてみて!ライオンだよ!おっきい」 「ホント!大きいね。ヤダ!目があったわ。どうしましょ」 「ハハハ。百獣の王と言うだけあって、いるだけで圧倒されるな。母さんあんまり近づいちゃダメだよ。喰われるかも知れない」 「キャーキャーこわい」 女の子がまっ先に駆け出して行った。親はと言うとイチャイチャしながら、手なぞつないで後からゆっくりとついて行った。 どうしたらそんな風に誤解するんだ?オレは獲物は襲わないし、むやみやたらに喰ったりもしない。それと、あんたはオレさまのタイプじゃない。 それから怖い怖いもやめてくれ。 むしろこの目を見てくれ。少しタレ目でかわいいとは思わないか? あ〜行ってしまった。 お前たち人間と同じとは言わんが、笑ったり泣いたりだってするんだ。失礼にも程がある。 昔々、オレさまが子ライオンだった頃、思ったことがある。たぶん生まれて初めて口にする。 どうしてこんなに顔がデカイのだ? こわく見せるため? それとも大きく見せるため? まさかと思うがセクシーがウリ…? いや、それは、その、ない…だろー その点、チーターやヒョウのなんとも言えない 小顔さが羨ましくて羨ましくて… 見えぬところで涙ぐましい努力をしている。仲間には絶対にナイショで頼む。 飼育員が手招きしてる。はっきり言ってオレさまは、あいつが苦手だ。この百獣の王をつかまえて、毎日毎日飽きもせず話しかける。かわいいかわいいと撫でるし、暇さえあれば覗きにやって来る。オレは一度あいつに言いたいことがあるのだ。 仕事しろ!オレなんぞにかまってないで 自分の仕事を全うしてくれ。 ライオンはそう言うと、くるりと背中を見せた。飼育員は二言ほど何か言うと、同じように背を向ける。そして…… ガオーガオーガオガオガオー (またあしたなー)

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