この庭は、どのくらい放置されてたのだろう。 枯れては生え、生えては枯れるをくりかえしたらしい雑草は、びっくりするくらいはびこっていた。 この中から探すのか……どのくらい時間がかかるだろう?ちょっとだけ呆然とした。 「えーと。塀の外でぱあって投げたとして……って、これは設定でしたね」 『それでも、あまり奥までいくことはないだろう。小さくて軽いものだからな』 「ですね。じゃあ塀のそばを重点的に探してみますか。門の向こう側ってことはないんですか?」 『それはないな。もみ合ったのは桜の近くだったから』 私は一旦門のそばまで戻り、門から塀の角までの3メートルくらいと、角から右に3メートルくらいを探そうと決めて、しゃがんで草をかきわけながら進んだ。 素手で草を抜きながらとも考えたけれど、手を切りそうだったので断念した。 でも。 「みづきさん」 『なんだ?』 「やっぱり、軍手とかはめて草を取った方がよさそうです。手を切っちゃいそう」 『それはそうだが、お前が大変だぞ?』 「あの女の人も草は取っていいって言ってくれたし。かきわけるだけだと見落としそうだし」 『しかし、軍手なんてどこに売ってある?このあたりにはホームセンターはないぞ?』 「バス停からちょっと行ったとこにコンビニがあったでしょう?あそこにいけばありますよ」 『コンビニに売ってあるのか?』 「今はなんでも売ってるんですよ。トイレにも行きたいし、ちょっと行きましょう」 最近のコンビニの品ぞろえには、みづきさんはかなり驚いていたようだった。 元の家に戻ってきた私は、軍手をはめて草取りをしながら進んだ。 草取りというよりは草ちぎりに近い感じだけど、かき分けるだけよりはすっきりして、ずっと探しやすくなった。 私は草取りをしながら、みづきさんは視界をフル活動させて2人分の目で探していった。 塀の角まで来たけれど、何も見つからなかった。 取った草の山だけが大きくなっていく。 ペットボトルのお茶を飲みながら、少し休憩をとることにした。 吹いてくる風が心地いい。 「とりあえず半分ですね」 『悪いな。手間をかけさせて』 「何言ってるんですか?みづきさんらしくないですよ?さて後半戦いきましょう」 でも後半も、草の山が大きくなるだけでブローチは見つかる気配もなかった。 (どこか違うとこに飛んだとか。誰かがとっくに拾ったあとだとか)そんな考えが頭をよぎった。 (諦めたくないけど、諦めるしかないのかな。でもすごく大事なものって感じだったし) そう考えたのも、きっとみづきさんにはわかってしまってるはず。 でも考えずにはいられなかった。 これ以上は、遠くに飛ぶことはないと判断したところで作業をやめた。 「この草って、1箇所にまとめといたほうがいいですよね?」 『そうだな。塀のかどのあたりにまとめたがいいだろう』 「はーい」 続
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