精神的S
02・過去と焦燥(05)

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「私は、何を求めてるんだろう?」  なつみは、自然と口が動いていた。 「私は、何を求めているのかな? 私は、何を求められてるのかな?」  相手を困らせるだけだと分かりながらも、ミシオの目を見つめ、そう問いかけてしまう。 「どうしたの、なつみ? 何かあった?」  なつみは俯き首を振る。 「別に、何もない」 「それじゃ、どうして?」 「なんだか、分からなくなっちゃって。何もかもが…結婚した意味とか、仕事をしてる意味…生きてる意味とか何もかもが。  私自身、何がどうなったら悲しいのか分からないし、どうしたら楽しいのかも分からなくなってきちゃって」  ミシオは、何も答えなかった。  答えないのではなく、何も答えられなかった。 「仕事をしてても上が見えないし、目的も見えない。支えもないから倒れそうになる」 「プレッシャーを感じながら、張り合いがないんだ」  正に、その通りだった。  店を潰す訳にはいかないが、どんなに頑張っても、店長以上になれない。  なつみの力が及ばなくても、売り上げは落ちても店を潰すほどの被害は出ない。それと対比するように成果を上げてもこれ以上のランクアップは望めなかった。  幼稚な言い方をすると、誉められる事はないけれど、叱られる可能性はある。が、叱られるが処罰は受けない。そんな環境でなつみは叱られないように、怯えながら働いている錯覚に陥ってしまう。  本当は達之の為、家族の為に仕事を頑張っていると言いたいけれど、言える状態ではない。それが悲しくて仕方なかった。 「私が出来るのは、つまらないモヤモヤを晴らす事ぐらいなの」  落ち込み弱い姿を曝け出すなつみの唇に、ミシオは突然キスをした。  軽く唇が振れ合うだけのキスをした後、唇をしっかりと這わせ、舌を進入してくる。  しばらくのディープキスの後、ミシオは顔を離し、囁くように『どうする?』と問いかけた。  なつみは、一度唾を飲み込んでから服を脱ぐ。  無言で服を脱ぎ、なつみとミシオは一糸纏わぬ姿になる。  仲が良いと言っても、休みの折り合いが付かず、一緒に旅行などに行った事がない二人は、一緒に温泉に入ったりする裸の付き合いはなく、着替えを目にすることもなかった。  なつみがミシオの裸を見るのは、取材に来た時以来の二回目である。  ミシオの裸は、彫刻に生命が宿ったかのように完璧に整い、怪しい魅力を醸し出していた。  多くの男性に性的なサービスを提供してきた経験から来る魅力なのだろうか? 取材に来た時よりも遙かに魅力的になっている裸体に、なつみは思わず息をするのを忘れそうになる。 「女性にするのは初めてだから、喜ばせられるか分からないけど、良い?」  ミシオの体に見とれながらなつみがコクリと頷くと、ミシオは『寝て』とベッドを指差す。  鼓動を高鳴らせながらベッドに乗っかり仰向けに転がると、ミシオはなつみの体とは上下逆方向に転がり、なつみの陰部に顔を埋めた。  秘められた部分に、ミシオの舌が這いずり回る。友に見られている恥ずかしさと快感から体が一気に熱くなり、なつみは軽く喘ぎ声が出てしまう。  なつみに目の前にミシオの下半身がある。  ミシオと同様の行動を取るのが礼儀なのだろうか? なつみがそう悩み戸惑い、体を動かす余裕がなかった。  今は、久しぶりの快感に溺れているのが、精一杯だった。  女同士の性行為には、区切りがない。  男の場合はハッキリと『イク』と言うのが形で表れるけれど、女にはハッキリとしたものがなく、イッたかどうかは自分自身にしか分からない。  男の場合は、イッてしまったら再び精気を養うまで愛撫しか出来ないが、女の場合は昇天しイッた後も変わらずに性交渉を続けられる人も少なくはない。  どちらかが終わりを決めないと、永遠と続いてしまう。

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