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 栗原美津江は、小杉亜希を阪急電鉄の駅の東改札口まで送り届けると、疾風怒濤のように、一人暮らしをしている1DKのアパートへ立ち帰った。このアパートを世話してくれたのは、他でもなく鳥飼景子であった。実際、記憶喪失者として舗道で保護された美津江に対し、景子はその後の生活に必要な衣食住の全ての世話を滞りなく行ってくれた。そして、自らが身元引受人となって、記憶喪失の美津江を暖かく見守り続けてくれている。  玄関ドアの鍵とチェーンを掛け、ド、ド、ドと部屋に勢いよく上がり込むと、全ての部屋のカーテンを締め切った。  ちょっと背伸びをし、まったりと満足げに微笑んだ美津江は、壁際のパイプベッドのカバーの端に、自らが身につけている衣類の類を、一枚一枚と脱いでは、それらを重ねていった。  最後の仕上げをするように、美津江は一気呵成にブラジャーを剥ぎ取ると、ショーツに左右の指をかけ、サッと足首まで吊り落としたのだった。 (ア~あぁ・・・・・・)  開放感から醸し出される愉悦に酔いしれてしまったのか、美津江は白い水玉模様の入ったブルーのショーツを右手人差し指に掛けると、クルクルとそれを空中で回した。

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