「水口さん・・・・・・」
「えっ」多恵は夢から覚めたように、声のする方へ顔を向けた。
「眠っていらっしゃったのですか」介護士は笑顔で多恵の顔を覗き込んだ。
「介護士さん・・・・・・」多恵も微笑んだ。
「あら、今日の水口さんは、とってもスッキリとした感じがしますね。そうだ。もうすぐお昼ご飯ですから、車椅子に乗りましょうね」この時、多恵は視線を足下に送った。そこには白いシーツにくるまれた掛け布団が丸まっているだけだった。
「ほら、良いお天気になったわ」介護士は心からそう言うと、窓のカーテンを勢いよく開け放った。