作品に栞をはさむには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。
親切な親子が手を繋いで、さも楽しそうにあの喫茶店に入って行く様子を見届けると、良江はその好意の染み込んだ雨傘を勢いよく広げてみた。 その開いたレモン色の傘には、綺麗な花柄が描かれていた。 今の一件で、少しは気の晴れた良江が、子供のように傘をクルクルと回し、通い慣れた道を進んで行った。すると、ゆっくりとお椀が被せられていくように、辺りが段々と薄暗くなり始め、見馴染んだ風景が朧げに霞み始めたのだった。
コメントはまだありません