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 この時、川村テル子の心が、何者かにムギューッと鷲掴みにされたように感じた。  その途端、テル子の頭の中にザワザワとした、線虫のような言葉の切れ端が、沸き上がっては蠢き、それらが繋がり、群れ始めると、テル子の頭の中で会話が弾けた。 「今日もね、お嬢さん、長男のお嫁さんがね、是非、お母様とご一緒したいって、言ってくれたんだけど、若い人向きの映画じゃないし、私、お嬢さんに会いたいと思っていたから、遠慮したのよ。本当に、私のことを、みんな良くしてくれてね」テル子の表情は明るいが、その目の色は苦痛に歪んでいる。

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