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***************  ここは・・・・・・、この世界のコンサートホールと呼ばれる場所なのか・・・・・・。  黒服で身を固めた奏者達の群像が、ある一点を中心にして、放射線状に競り上がるように広がっている。奏者には、木管楽器、金管楽器、打楽器、編入楽器、そして弦楽器などの各パートグループがあって、各自が、フルート、ピッコロ、オーボエ、イングリシュホルン、クラリネット、バスクラリネットなどパートを担う楽器を携え、楽曲を奏でている。そして、ある一点には、白服で身を固めたマエストロがコンダクターを掲げ、指揮を執っている。  荘厳で、優雅で、闊達なリズムとテンポが、悠久の大河を流れるような心地よい響きで吾に降り注ぐ。正に、全体の秩序と調和・・・・・・。いや、違う。矢張り、この中に居る。それらを乱す奏者が・・・・・・。吾はそれに意識を同調させた。すると、吾はその者の前にあった。 (お前とお前、それからお前だ。お前達、どうして、そんな自分勝手な演奏をするのだ。マエストロのコンダクターをよく見て見ろ。全く違うだろう)吾は叱責した。 (俺はマエストロの指示どおりに演奏している)苦痛に顔を歪めた奏者が答えた。 (俺もそうだ。コンダクターの動きに合わせている) (俺たちも、全員そうだ)ここにいる奏者は何故か皆な苦しげだ。 (違うだろう。お前達の周りの奏者の音に意識を預けてみろ。お前達の音は、ズレ落ちて、狂っている) (でも、俺たちはマエストロに命じられたとおりに演奏している。ほら、あの黒い腕のコンダクターの動く様と俺たちの音はピッタリと同調している) (黒い腕?違う!白い腕だ!)吾は奏者達に比べて一際大きなマエストロに意識を注いだ。 (何!どうなっているんだ。白い腕の下から影のように朧気な黒い腕が生えて、違うコンダクターが振られている) (だから、俺たちは、あのコンダクターに合わせて楽器を奏でている) (どうしてだ?どうしてそんな真似をする?) (それは、マエストロが命じるからだ) (そうだ。俺達もそうしたくはない。他の奏者には代わりの者がいるのに、俺たちは未来永劫ここにいて、楽器を奏でなければならない。しかも、自分達が奏でる音色が自分達を苦しめる) (どうして、お前達にマエストロはそれを命じる) (それがマエストロの意思だからだ) (その意思とはなんだ?) (俺たちには分からない。だが、アナタには分かるはずだ。俺たちを、いや、ここに居並ぶ奏者の全てを救ってくれ。このままだと、俺達は異質な俺達となって増殖してしまう。そして、すぐに全体に破滅が訪れる)                             ***************

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