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 今から半年くらい前から亜希は頭痛や吐き気を訴えるようになった。最初は小夜子も風邪くらいにしか思わなかったし、当の亜希にしても、忙しそうにしている母親に心配をかけさせたくはなかったのか、症状をはっきりと伝えることもしなかったために、そのままずるずると日時が過ぎていった。 「亜希、何をやってるの」ちょうど春休みに入ろうとする日の前日、久しぶりに亜希と一緒に夕飯のテーブルについた小夜子は、箸を亜希がポトリと落とすのを目撃した。 「もう、赤ちゃんじゃないんだから」 「でも、ママ。何だか指に力が入らないの」 「えっ・・・・・・?」テーブルの上に落ちた箸を小夜子が亜希の指に握らせる。でも、亜希がそれを受け取って、料理の盛られたお皿の方に動かそうとすると、また、ポトリ・・・・・・亜希の指から箸がこぼれ落ちるのだった。 「そう言えば、亜希、あなた前から頭痛や吐き気がするって言っていたでしょう。それって、今はもう治っているの?」亜希は下を向いて首を左右に振った。その瞬間、小夜子の胸に一抹の不安が過ぎり、背筋に悪寒が走った。  そんなことがあった二日後、小夜子は亜希を連れて市内の総合病院を受診した。だが、亜希を診察した医師から告げられたのは、子供専門の脳神経外科のある〈小児総合医療センター〉に紹介状を書くから、直ぐに受診するようにとのことだった。

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