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***************  吾がビッグバンにも匹敵する強烈な衝撃で、この栗原美津江の肉体に〈注入〉された瞬間、時空間転移により五十六年先の未来に栗原美津江の肉体を運んでしまったが、場所は栗原美津江が被災した場所と同調してしまっていた。すなわち、時の経過に伴い、この喫茶店〈サントス〉の正面に位置する舗道に変貌していた場所であった。その舗道に平伏している吾、いや、栗原美津江を店の中から見つけ、颯爽と店を飛び出しては駆けつけ、栗原美津江の身体を助け起こし、優しく抱きかかえ、店内へと運び入れ、介抱してくれたのが、誰あろう、この「ケイコさん」と呼ばれる女性。すなわち、鳥飼景子その人であった。  担ぎ込まれた吾は、店の一番奥のソファーにもたれ掛けさせてもらい、文字通り青息吐息の吾と同化した栗原美津江の背中を優しく撫でながら、鳥飼景子は言葉を発することなく、労わるような眼差しで、栗原美津江の血の気の引いた真っ青な横顔を見つめていた。そして、その傍らで慌てふためき、グラスに注いだ水を急いで運んできた中肉中背の男性が、-どうしたんですか?-大丈夫ですか?-救急車を呼びましょうか?等と、吾に向かって、矢継ぎ早に言葉を繰り出してきた。そう、この中肉中背で鳥飼景子より幾分歳が若く感じられた男性こそが、今の吾と栗原美津江の上司で、この店のマスター、藤村隆司である。                              ***************

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