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 祖父母の見舞いも虚しく、あれからも小杉亜希の容態は日増しに悪くなっていった。鈴鹿女医は担当医としての責任感や使命感といった枠組みを大きく越えて、まるで亜希の本当の母親のように寝食を忘れて亜希に付き添った。しかも、不思議なことには、鈴鹿女医が亜希のか細くなった小さな手を握りしめる度に、亜希の意識がしっかりと戻り、満ち足りた安らかな表情で、鈴鹿女医に微笑みかけるのだった。  それに引き替え実の母親の小夜子はと言うと、例え会社の命運を賭けた新商品開発のプロジェクトチームの責任者として多忙を極めているとしても、実の娘の亜希の許を毎日訪れこそすれ、僅かな時間だけ亜希に付き添っているだけで、後は脱兎のごとく職場へと舞い戻るのであった。

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