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***************  吾は、この個体が栗原美津江に会いに来た理由を当然感じている。正確に記すならば、栗原美津江ではなく、吾に触れられるためにこの場所へ来たのだ。  では、吾は・・・・・どうも吾は人間で言うところの、お人好しでお節介に成り下がってしまったようだ。いや、きっとこれは、吾が寄宿している栗原美津江の善良な意識に負うところが大きいのかも知れない。いや、いや、それともこれは、吾の抜け落ちた意識の欠片を取り戻すための必須条件なのかもしれない。でも、どちらにしても、ヤレ、ヤレなのだが・・・・・・。 「でね、お嬢さん、娘とそのお婿さんなんかも・・・・・」機関銃の一斉射撃のように、自身の幸せな境遇を美津江に語り聞かせる川村テル子を後目に、吾は吾を栗原美津江から放出した。  その刹那、栗原美津江と川村テル子のこの世界における時間と空間がフリーズしたように停止した。 「あれ?」この時、藤村隆司は厨房の片隅で、川村テル子の言葉が一瞬途絶えたことに違和感を覚えたようだ。そして、厨房から一番近い席でオムライスを頬張ろうとしていた鳥飼景子も異質な雰囲気の中で、スプーンを持つその手を制止させたしまった。  こうして、吾によりこの世界が塞がった。                              ***************

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