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「でも、あれよね。さっきのあのピエロのお兄さん、看護師さんにチョッカイでも出して、余計なことを言って、それで、お仕置きをされていたんだわ。きっと・・・・・うふふ、お気の毒だわね。さて、それじゃ私は、お墓参りも済んだことだし、美津江さんのお店でランチにしましょうか」川村テル子は、小一時間ほど前に駅の構内で募金をした際に、佐藤看護師によって手提げバッグの取手に結びつけてもらったヘリウムガスで空中にプカプカと浮いている白い風船を楽しそうに眺めた。 (今日は何にしようかしら)テル子がお昼のメニューを思い巡らせながら、喫茶店のエントランスに近づいて行った時、 〈カラコロカラリーン〉穏やかで円らな鈴の音とともに、樫の木の扉が押し開けられると、内から小学生の女の子とその母親らしき女性が姿を現した。 (あら)テル子は、その女の子の持つ白い風船に目をやった。すると、その小学生の女の子、そう、小杉亜希もテル子の白い風船に気づいて、 「あっ、亜希といっしょのだ」テル子に屈託のない明るい笑顔を寄せた。 「そうね。お嬢ちゃんも駅でもらったの?」 「そう。亜希はピエロさんからもらったの」 「そうなの。私はピエロさんの隣にいた看護師さんからいただいたのよ。そうだわ。よかったら、この風船もお嬢ちゃんにもらってもらえるかしら」 「いいの?」 「ええ、もちろんよ。だって、私のようなお婆ちゃんが白い風船をぶら下げていてもね」そう言うと、テル子は風船に結ばれた糸をバッグから外すと、亜希に手渡した。 「ありがとう」 「いいえ。どういたしまして。お嬢ちゃん」

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