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***************  この物質で構成された世界における生命体の誕生にあたっては、その生命の源としての意識がなくてはならない。  吾のような純粋な意識体は個々の意識として存在することは可能なのだが、例えば人間という生物で説明するなら、この世界の意識の母体となる集合体から時空を超えて、虚空に千差万別の色彩を放つリボンが飛来するように、無数の意識の種がこの地球という惑星に到来し、人間の精子と卵子の結合と同時に調和と秩序のルールのもとに定められた一つの意識体がそこに注入され、時間の経過を追って、胎児となって育っていくのである。  また、これは当然のシステムとして、人間の物質的な寿命が尽きた際には、その注入された意識体は再び意識の母体となる集合体へと戻ることになるのだ。  なぜなら、脆弱なこの物質世界の生命体は、吾のようには決して意識体のみでは存在することはできないのだ。  そして、この度の現象は、ある意識が凝り固まって揺らぎをもたらし、この世界の調和と秩序を崩したことによって、鈴鹿女医の失った子の意識体が小夜子の体内に融合し、小夜子の体内に注入されるべき意識体が行き場を失って意識の母体へとユーターンして帰ってしまったようなのだ。  そう。だから、そうなのだ。亜希の検査に栗原美津江が小夜子に代わって病院に付き添った日の夜に、例の夕食会の席で、吾が亜希と鈴鹿女医とに感じたものは他でもなくこのことだったのだ。  だが、この世界の秩序と調和・・・・・・これを吾の世界の秩序と調和に置き換えてみると、何だか無性に気になるのだ。このフレーズが、どういう訳か。                             ***************

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