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15. " 波紋 Ripple 15 "   「お帰りなさい、今日もお疲れさま」  「ふへぇ~。どうしたの?  起きて待たなくていいのに。先に寝てていいんだぞ」  「体調の良い日は、お帰りなさいって言いたいの」  「ありがと、気持ちだけでよいよ、無理しないで!」  ネクタイを外しながら夫がそんな風に言う。  「私のせいで、最近ぜんぜん私たち会話もなくて、申し訳ないと 思ってるの」  「何々? もうずっとこんな感じで過ごしてるし、俺はぜんぜん気にして ないから。君の病気が治ればまたいくらでも話できるんだしさ」  そう言いながら夫はリビングへと向かう。  あの夜のことを知らなければ、夫の言葉に感謝したのかもしれないけれど あなたは気にしなくても、私が気になるんだってばぁ、って思いながら 彼の言葉を白々しく聞いていた。  さて、どうしようか。  このまま引き下がって自分の寝室に向かうのか、彼の後を追ってリビングに 向かい、本当に言いたい言葉を紡ぐのか。  彼の様子を伺っていると、今宵も誰かさんと楽しい時間を過ごせたから なのか? 機嫌がよさそうだ。  そしてこれ以上は私とは話を続ける気もなさげな所作で、台所で水を口に すると、もう誰にも用事はないといわんばかりて゛自分の部屋に入って いきそうな気配が見て取れた。