保健室の天使
第4話ー③ そして僕らは再会する

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「で、その天江さんが僕に何のよう?」 「うーんとね。コータローと遊ぼうと思って!」  使沙の言葉に幸太郎は顔をしかめる。  この間もそうやって僕のことを――。 「あのさ。前から気になっていたんだけど、ちょっと慣れ慣れしくない? いきなり名前――と言うか、僕は『幸太郎』! 『コータロー』ってなんだか犬みたいじゃないか!」 「わあ、本当だ! コータロー、お手!」 「しないよっ!」 「ええー。あ! じゃあ――わんわん!」  使沙は両手をグーにしてから、その手をちょこんと前に出す。 「何?」 「私が犬になります」  得意満面に使沙はそう言って、幸太郎からの指示を待っているようだった。 「やめてよ、僕がやばいやつみたいだろ……」 「大丈夫! コータローは凄い子だから!」 「意味わからないし!」 「コータロー、撫でて撫でて!」 「先生! この子、なんとかできませんかー!?」  幸太郎は保健室にいるであろう袋井に叫ぶ。 「はいはい」といって袋井は幸太郎たちの前に姿を現す。 「ほら、使沙。宮地君が困ってるじゃない? これ以上やったら、嫌われちゃうかもしれないわよ」  袋井が言うと、さっきまで楽しそうに犬の物まねをしていた使沙はギョッとした顔をしてから、「ごめんなさい」といって俯いた。 「ちょっと距離感が掴めない子でね。宮地君も許してあげてね」 「まあ、はい」  もしかしたらこんな性格のせいでクラスからいじめを受けた末に、保健室登校になったとか……? だからと言って、仲よくしてやる義理もないけれど。  幸太郎は悲しげな顔で袋井に諭されている使沙を見ながらそう思った。 「じゃあ私は仕事に戻るから。使沙、今度は迷惑かけないようにするのよ?」 「はーい!」  満面の笑みで袋井に答える使沙。袋井は先ほどまでいた教員用の机の方へ戻っていった。  これでようやく静かに眠れる――幸太郎はそう思ってベッドに横たわると、 「じゃあ、コータロー! 何しよっか?」  と使沙も同じように横たわり、幸太郎の目をじっと見つめながら微笑んだ。  唐突のことで判断が遅れ、少しのあいだ使沙と見つめあう幸太郎。しかし、幸太郎はハッとして頬を赤く染めると、すばやく身体を起こした。 「迷惑かけるなって言われてただろ!? 僕はゆっくり休みたいんだ! だから放っておいてくれないか!!」 「えー、つまんないー。遊ぼうよー」と唇を尖らせる使沙。 「だから――」  使沙へ文句を言おうと幸太郎が口を開いた時、目の前にいる使沙と記憶の端で眠っている誰かの姿が重なった。  明るい声、天真爛漫な性格――そうだ、前に夢で見た女の子。その子に彼女が似ているんだ。

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