透明な罪のゆくえ
8.似てるふたり

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 夏休みに入る前、まさかの話の流れで片思いしていた奏哉と付き合うことになった陽菜は、ふわふわした気持ちで翌日学校へ行った。  昨日はあまり眠れなかった。奏哉と話したことや付き合うことになったことが何度も何度も蘇って、そのたびにベッドの上でまくらに顔を突っ伏し、暴れた。  あまりに二階の部屋でばたばたとするので下の階にいた母親から「陽菜、大丈夫……? 学校で何かあった?」と本気で心配されてしまった。  「ごめんごめん、なんでもないの」とにやける口元を抑えられずに言うと、母親は陽菜の表情を見てほっとしたように戻って行った。ベッドで暴れるのはもうやめようと決めた。  それでも奏哉の「付き合わない?」という言葉の表情が頭の中でループして、いつ寝たのかわからないまま朝が来た。  愛梨と美桜には夜に「明日話がある」とメッセージアプリで送っていた。何度も「今言え!」「通話する!」と言われたが、「会って話す!」と突き通した。  奏哉にも、ふたりには話したいと言ったら、「もちろんいいよ、別に隠すつもりはないし」と応えてくれた。  そんな陽菜の対応からなんとなく察するところはあったらしく、「奏哉と付き合うことになった」と言うと「なんとなく察してたけど」と言いつつも「良かったねー!」と大喜びしてくれた。 「いやーでも、思ったより展開が早かったわ……」  ひとしきり3人で大騒ぎした後、愛梨が言った。曰く、奏哉も陽菜のことを気に入ってるとは思っていたが、あまりに誰にでも優しいのでそれが「恋愛」に発展するにはちょっと時間がかかるかなと思っていたという。   「私もいつか上手く行くんだろうなーって思ってたよ」  美桜もそういう。  陽菜にとっては「奇跡みたいなこと」だったのに、ふたりはそんな展開を想像できていたという。 「ほんとに? だって奏哉モテるし、誰にでも優しいし、私なんてありえないと思ってたよ」  美桜は、うーん、確かにそうなんだけど…と言いながら続けた 「なんていうんだろう、ふたりはなんか、空気が似てるんだよね。他人に優しいところとか、なんていうの、テンポっていうか」 「わかる! あんなにモテる男普通は心配だけど、陽菜と奏哉なら大丈夫って思うよね」  そんな風に思われていたことに陽菜は驚いた。  陽菜から見ると、奏哉は完璧な人だったから。  そういうとふたりに「陽菜だってめっちゃいい子じゃん! 誰にでも優しくて真面目だし」「絶対意地悪とかできなさそー!」と笑われた。  素直に好意的にそう言ってくれてるのが伝わって、ほっとすると同時に嬉しい。  この性格を「いい子ぶってる」という人たちがいるのを、陽菜は知っていた。  ふたりと仲良くなれて良かった。 「夏休み、うちらとも遊んでよねー」 「当たり前だよ! ねぇ、どこ行く!?」  そんなテンションのまま、夏休みの計画で盛り上がった。

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