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咖哩いろのだんだら模様の暑がりが余計暑くなりそうな父愛用の毛布は今は白い。 寝ている男のそばに にじりよって、こっちから挑発して誘ったんだ と公言したとても、欲を抑えられず 手を出してしまったが最期、女学生に分がある、そんな世に、男は90代だが、矍鑠として、それまで品行方正に歩んできて 清廉潔白なその身に 科など一點もなかった 人生の終晩にして この件で それが潰えた、なのに、言いのがれも 逆らいもせず、おとなしく手錠をかけらる。 平屋の四面に巡らされたレースの幄をめくって中に入ると、またおなじく幄がある。何重にも屛てて人から見られるのを避けるみたいな造りを訝る。まるで「ここで禁を侵してください。」とでもいはむばかりに建っている。不良が屯して犯罪の巣窟になってもおかしくない。何のための建てものなのか。 一つひとつ レースの幄に覆はれた 四角く白いテーブル席がならんで、カフェテリアらしいとわかる。 ぼくらの居るところから すこし離れた区画は、さっきの景が 再現、というか、あちらがはは過去そのものである。 学生の男女が、テーブルの上に、若人らしく たくさんの食事をならべて、ときに 立ち上がって、テーブルのまはりを廻りつつ、大事な話をしている。思い出すと うづうづしてくる。 席にかけた私の制服の腹部、スカートの上に出たブラウスの みだれた裾らと、あまりあまった腰ひもを気にしていると、何 もそもそしてるの? と わらはる。これを いつもなら ベストで隠しているんだけど、と あたりへ見放く。下がうづき 腰が落ち着かないのは、そればかりのせいじゃなく、がらんとした この舎屋にのこった 記憶や念が 伝はってくるせい。 つかれて寝てるとき、若い女に ああしてにじり寄られたら、どんな男だって、理性を失って向かってくるに違いない。 男と私は近親である。父、或いは祖父かもしれない。 初めこそ、男に罪を着せむと 被害者づらして 涙ながらに、親しんでじゃれついただけで とつぜん男に襲はれて いかにこわかったかと、無垢な心に 謀りもないように、訴えていたけど、手錠をかけられた男のすがたを この目で見て、気が緩み、もう逮捕されたんだからと、男のことを、いけしゃあしゃあと 悪びれもせず、朋たちに話してみせる かたはら、もう幽霊たちが見えるようになっている。 幽霊のかおは 白いぼかしが四角くかかって、それをつつむ髪型はショート・ボブ。着ている制服は ぼくらとおなじ、くすんだあをいスカートとベストと、ブラウス。 危害を加える気はないらしく、しづかに佇んで、こちらを じっと見つめている、怨念をたたえて、一触即発げに、こわくて、すぐにたち去りたくて、ご免なさいごめんなさいと思はずに口走りながら、そのかおに、罪清むるがね、持っていたバケツの水をかけつつ とびだし走り逃げるも、幽霊はカフェテリアのそこここにいて、その間をバウンドされたようにぐるぐると繞る。 パニックになりかけたところで、廊下にぬけたらしい。現実の友たる美咲とあう。くらくて つめたい廊下で、かげって 佇んで、彼女は ずっとここで何をしていたのか、いぶかしいけど、幽霊がたくさん居たよねと、きれぎれの息もち すがって、あひしらい、その見解の合致ゆ、うつしきに、安みして、携はり、ともに走って逃げ去る。

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