花吹雪
エピローグ 47

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 花吹雪に命を救われた俺は、次の日からあらゆる精密検査を受け、全て異常がないと再検査を受けさせられた。  八重婆ちゃんは毎日着替えと果物の差し入れに病室を訪れ、父さんも仕事が早くあがった時は面会時間ぎりぎりまでそばに付き添ってくれた。  陽菜は学校がはじまると部活以外の日は遠回りしてでも病室に顔を出し、互いにとりとめのない話に花を咲かせた。  晴れて二年生になった俺は再び陽菜と同じクラスになり、くじ引きで席替えしたのに隣同士の席だと教えられた時は噴きだして笑ってしまった。  女神様も精霊も力をかしていないのに、俺は陽菜とよっぽど不思議な縁で結ばれているらしい。  入院している間、待合室のテレビや雑誌などで花吹雪がとりあげられているのを知った俺は驚いた。  朝のニュースも昼のワイドショーも花吹雪の映像で持ちきりになっていて、あらゆる有識者がコメントを求められるも、誰一人としてこの現象を解明することはできなかった。  陽菜から教えられた情報ではネット上では更にヒートアップしているらしく、有名な動画サイトでも花吹雪の映像は目まぐるしく再生回数が上昇しており、病院の外で動画を見せてもらうと様々な角度から撮影された映像があり、言葉を失うほど美しい光景に胸が熱く、そして苦しくなった。  一週間も経つと過熱した花吹雪騒動はだんだんと下火になり、お天気コーナーで『綺麗でしたね』と振り返られる程度に落ち着きをみせた。  再検査も異常なしだったため、診察室で説明をする担当医は眉根を寄せつつも言葉を慎重に選んで俺と父さんと八重婆ちゃんに結果を伝えた。 『立場上、大きな声では言えませんが、医学でも科学でも説明できない奇蹟が救ったとしか言えません。あの桜の花びらがあらわれた日以来、他の患者さんたちが重篤じゅうとくな方も含めて全員回復に向かっています。喜ばしいことですが、私たちとしては複雑な気持ちです』  最後には笑みをこぼしながら語る担当医は、通院で最後の検査を行うのを条件に退院を許可してくれた。  家に戻り、心配かけてすまなかったと一連の騒動を母さんに報告すると、久しぶりに見る母さんは嬉しそうに微笑んで迎えてくれた。  もうすぐ一周忌だ。親戚が集まってにぎやかになるから母さんもきっと喜ぶだろう。  退院を喜ぶ父さんと八重婆ちゃんにお花見の相談をすると、近いうちに行こうと、とんとん拍子に話が決まった。  学校に復帰すると、一年から同じクラスにあがった男友達たちが何かと気遣ってくれてありがたかった。  昼休みと放課後に馬鹿話をする程度の間柄だったが、心から心配してくれる姿に素直に感謝の気持ちが湧いてくる。  交通事故と入院の話は部活でも知られていて、特進の彼は誰よりも俺を心配してくれていた。  不在をびると、彼は笑顔でいなかった分の塾と特進の課題をまとめて手渡してくれた。今までいなかった分を取り返そうと、その日の俺は張りきって彼のサポートをした。  ぼんやりした高校生活では気づけないままだっただろうが、予期せぬ事故に遭遇そうぐうしてから景色が一変し、多くの人に気を遣われ、支えられて生きているのだと実感し、それは何て幸せなことなのだろうと思い知らされた。  そして、四月の中旬を過ぎた日曜日に俺たちは遅い花見をしようと公園を訪れた。

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