花吹雪
第二章 再会 13

作品に栞をはさむには、
ログイン または 会員登録 をする必要があります。

 陽が高く昇り、陽光をさんさんと浴びる桜の木の下で香純は待っていた。  俺の姿を見つけると笑顔で手を振ってくる。  香純より先に戻ろうとして急いで戻ったが、彼女の方が早かったようだ。 「ごめん、待った?」 「ううん、今来たばっかり」  常套句じょうとうくだが、言うのが逆だなと俺は苦笑してしまう。 「おかしな顔してどうしたの?」 「何でもない。それより、面白いお店を見つけたんだけど一緒に見に行かない?」 「えーと、あまり遠くじゃなければ大丈夫だけど」 「駅前だから歩いてすぐだよ」 「それなら、いいよ」  承諾を得た俺は香純と並んで歩きはじめた。  川沿いを歩く途中、あまり遠くじゃなければと言ったのは何だったのか? と考えたが、お昼に戻ると言うくらいのお嬢様だから、無断での遠出は御法度ごはっとなんだろうなと思った。 「そういえば、携帯は手に入った?」  それとなくたずねると、隣を歩く香純は眉を八の字にしてうなだれた。 「ごめんね。持ってないの。でも去年約束した通り、雨の日以外はあそこにいるよ」  去年は何とも思わなかったが、それはそれでおかしな話だなと思ったので、さらに訊ねてみる。 「香純はどうして、いつもあそこにいるの?」 「私が一年の内で一番好きな季節と場所だから。桜が咲いている間はずっとあそこにいたい」 「そういうことか」  納得した俺は深く頷いた。  そして、自分にとってそういう場所があるだろうかと心を巡らせてみると、香純の隣が一番好きな場所で一番居心地がいいなと思い至ったが、こういう風に考える俺は乙女なのか、と自分に内心ツッコミを入れた。 「この辺りもすぐに満開になるね」 「今年の桜祭りも盛りあがりそうだ。香純は桜祭りは好き?」 「私、お祭り大好き。みんなが幸せそうな顔で桜を楽しむのを見ているだけで心がうきうきしてくるの」 「そうだね。去年は話を聞いてもらってばかりでお祭りのことなんて忘れてたけど、今年は一緒に回ろうよ」 「うん。優くんと一緒にお祭り行くの今から楽しみ」  香純がそう言ってくれるだけで嬉しさで胸が弾み、弾みすぎてどきどきし、破裂するんじゃないかと馬鹿な心配をしてしまう。  今はまだ人も閑散としているけれど、いざ満開となれば交通整理の人が駆り出され、順路通りに回らないとカオスになるほど混雑するから浮かれてはぐれないように気をつけようと肝にめいじた。

応援コメント
0 / 500

コメントはまだありません