美由紀と盆栽
第一章 二幕、新しい仕事と盆栽

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うちの専務がいきなり 「き、君、霞君、何を・・・」 専務の言葉など気にせずに私は話を続けた 「はい、実は私も盆栽を育てています、 五葉松と紅紫檀それと、もみじも育てています。 私の五葉松を見ていただけますか」 「おおそうかね、それじゃあちょっと 拝見させてもらおうかな」 私はタブレットを取り出して、私の盆栽の 写真を見せた。 「これが私の、五葉松の盆栽です」 盆栽屋の店主に褒められたやつを見せた。 タブレットが大きいので、実物大に近い 大きさで見られる。 「ほぉ〜、これを君が、うん、これはたいしたもんだ 誰かに教わったのかい」 「はい、盆栽店の主人に最初に教わりました」 「どこの盆栽店だい?」 「大路にある宝玉堂さんです」 「おぉ〜あそこか、私もあそこには よく行くんです、もしかしたら、 お会いしてたことがあったかもしれないですね、 でもここまで、できると言う事は大したもんです 社長室にも、何点か、置いてあるんです。 ご覧になりますか?」 「よろしいんですか、ぜひお願いします」 社長が社員の二人に 「話を進めておいてくれ、後で聞くから、 それじゃあ、霞さん、行こうか」 「専務、部長ちょっとすみません 行ってきます」 専務も部長も、鳩が豆鉄砲食らったような 顔をしていた。 社長さんと私は、社長室に行き 盆栽を見せてもらった。 「うわー!どれも本当に素晴らしいです、 あ~これ、ケヤキですね、これは桜ですか」 「君は、えーっと霞さんだったね、 そうですよ、それは桜です、君は種類まで よくわかっているね、その桜はまだ新入りですよ」 「私も、桜を育ててみようと思っていたんです 早速、私も購入してきます」 「そうなんですか、それではこの桜 あなたに差し上げます、育ててみてください」 「え~そんな、結構です。こんなに立派な物 いただけません」 「若い者が遠慮なんかするんじゃないよ、 いいから持っていきなさい」 そう言われて私は桜の盆栽をいただいて帰るのだった。 とても、嬉しかった。 小一時間くらい、盆栽の話で盛り上がっているときに 内線電話らしき物がかかってきて、 社長さんが出て話し出した。 「私だ、・・・うん、そうか・・・よし、そうだな・・・ うん、うん、わかった、そう言うことであれば・・・ やってもらうことにしよう、・・・わかった。」 と言って社長さんは電話を切った。 社長さんは私をみて、 「霞さん、君の会社で今回の仕事はやって貰うことにしたよ、 これから、宜しく、お願いしますね。」 と私に言ってくれた。私は、嬉しさのあまり、      「キャッ!!」 と言って飛び上がってしまった。 「ありがとうございます、仕事もいただいた上に この桜まで、頂けて本当にありがとうございました」 といって、深々お辞儀をした。 「そのかわり、と言っては、なんだが君に わが社の営業担当をやってもらいたいけど、いいかな?」 「はい、わかりました。精一杯、やらさせていただきます」 と社長さんにまたお辞儀をした。 桜の盆栽を抱えて私は社長さんと応接室に戻った。 部屋の中に入ると、専務と部長は笑顔で私を見て、 二人同時に頷いていた。 「霞君、きみそれどうした?」 部長が桜の盆栽を見て聞いてきた。 「はい、社長さんから頂きました」 専務も部長も驚いて、 「このようなものまで頂きましてありがとうございました」 と、お礼を言っていたが、社長さんは 「君たちに上げたんじゃないよ、霞さんにあげたんだから 勘違いするな」と一言。 「今回は、この霞さんがいて良かったですね、 私の気持ちを、和ませてくれた。とにかく これから、宜しくお願いします」 そう言って社長は部屋から出て行った。 商談も終わり(私はなにもしていなかったが・・・) 私たちは社に戻った。 専務と部長に社内では、盆栽のことは、皆に内緒に してもらう。 専務がうちの社長には盆栽の事も含めて、話したようで 後から社長室に呼び出され社長にお礼を言われた。 私はただ自分の趣味で話していただけなのに まぁ何はともあれよかったよかった。桜も頂けたし・・・ ただ相手側の社長さんが、営業担当は 貴方にお願いしますと言っていた事が気になっていた。 私は営業など詳しくは無いからどうしようかなと思っていたが、 男性営業も一人つけてくれると言うことで安心した。 いつだったか、うちの社長が初めて一緒に、 盆栽社長の所に挨拶に行った時だった。 盆栽社長が、いつになく厳しい表情で 私たちが初めて行ったとき、うちの社長が いなかった時の事を話しだす。 「あの時にもし、霞君がいなかったら今回の仕事は 無かったかもしれん、彼女が私の感情を 和ませてくれた」あの時と同じことを言ったのだ。 (盆栽社長って、根に持つタイプ?           少し、ケツめど、ちいせぇな) と思ってしまった。 うちの社長も汗を拭き拭き、ただ平謝り。 でも、結果オーライで、よかった。 盆栽社長の会社から仕事を頂いてから三か月ほど 過ぎた、仕事量も多く会社の業績もかなり上がったようだ。 うちの会社には、上半期、下半期の中で大きな功労を称した者に 与える、ゴールデンカスタマー賞というのがある。 今回は、私が貰えることになった。 「盆栽の話しかしていないのに」と 少々気が引けたが、賞状と金一封ももらえて 私は盆栽に感謝した。 (金一封の、封筒には、現金でナ、ナント五十万円も入っていた) ボーナスでもらう金額より、多い金額をもらい、私は 今回のプロジェクトの、メンバーと専務、部長も 含め、感謝も込めて近くのレストラン、と言っても ファミレスだが、宴会用の部屋を貸し切り 皆にお礼を込めて、盛大に? 呑み会をしたのだった。 出費は、かなりでかかったが、まだ半分くらいは 残ったのでそれは貯金した。 (美由紀ってしっかり者でしょ?) 仕事は軌道に乗ってきて会社も更に忙しくなってきた。 盆栽社長(私がそう呼んでるだけ)の会社に行くときは 私と営業の松桐君が、担当になって出向いて行った。 私が行くと必ず社長が出てきて、仕事の話は松桐君まかせ・・・ 私はと言うと、社長と盆栽談、それはそれで楽しい時間を すごさせてもらった。松桐君にはわるいが・・・ それでも、仕事が段々に増えていき、松桐君まで 新しい仕事の受注にこぎつけたのだった。 今の所、仕事の方は順風満帆で、言うことなし。 私のプライベートはと言うと・・・ 毎日、一人で盆栽たちとお話ししているだけ・・・ (ちょ~寂しい、寂しすぎる) 盆栽の、五松ちゃんと黒松ちゃんと桜ちゃん (盆栽社長から、頂いたもの)と、 今日の出来事などをテレビで毎日やるニュースのように 話しているのだが、いつも最後にため息がでる。 「イケメンの彼氏でもできないかなぁ」なんて 切に願う。 アラサー女の寂しい夜。 「明日も仕事だから早く、寝よっと」 冷たい布団にもぐり込み、一人寂しく眠る。 第一章 盆栽と私   終わり

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