美由紀と盆栽
第二章  盆栽と彼

作品に栞をはさむには、
ログイン または 会員登録 をする必要があります。

私は、盆栽用の小物だとか、大きめの盆栽を 買うときは、いつも大路にある、宝玉堂さんに行く。 そこで、おじさんと話しながら、半日以上そこにいる。 これが良いだの、この枝はいるだとか、いらないだとか 七十過ぎのお爺様の店主と話す。 プライベート時でお話する、唯一の男性がここの店主。 男性には変わりはない。(テンションは上がらないが) 若い人で盆栽を趣味にしているというのはあまり 聞かないと店主は言う。 (アラサーですけど、若いつもりでいます、              それがなにか?・・・) 「私みたいな女は、そういないですよね」 と店主に行ったら、 「そうだね、そうかもしらん」 そう、抜かしたもうた。気を使って 「そんなことないですよ」 ぐらい言ってくれても、いいと思うんだけど・・・ まあしょうがない、事実なんだから。 そうして、必要な物を購入して自宅に帰る。 黒松ちゃんと、話をしながら手入れをしてあげる。 「ここが、伸びてますね~、チョッキンしましょうね~」 と、飼い主が犬のペットに話すように盆栽に 話しかけるのだが、 きっと、他人が見たら絶対に近づきたくない 女に見えるだろうなと一人思いながら剪定をする。 だけど私にとっては、どれも可愛い私の子供たち、 愛情込めて、接しているのだ! 盆栽社長から頂いた桜ちゃんも元気に葉を 茂らせて、来年の春には綺麗な花を、 たくさん付けてね、と語りかけながら剪定をしている。 私の住んでるマンションは2DK。 その一部屋を盆栽手入れ専用部屋にして、 剪定や手入れをするときには、部屋の中で 土などこぼれてもいいように下にシートを 敷き専用台を組み立てて、そこでする。 赤ちゃん言葉でかたりかけながら・・・ ベランダは、日光を調節できるようにしてあり、 マンションは、いい具合に南向き、 基本的に盆栽は日を好むので、天気が最悪の日でない限りベランダにおいてある。 「宝玉堂の店主さんと盆栽社長以外に 若い人で盆栽を育てている人と、お話ししたいなぁ」と考えている、今日この頃、 ある日、仕事中に部長が私の所に来て、 こう言った。 「美由紀君、実は大きい声じゃ言えないけど、私も盆栽を育ててみたいな、と思っね、どうだろう私の先生になってくれないかな」 とひそひそ話でもしているかの如く、いうではないか! (何かい? 盆栽を育てるのは、麻薬Gメンにでも捕まるのか? )と言いたくなってしまった。 しかし、私もみんなに言っていないのだから、しょうがないと言えばしょうがない。 なぜか、私までひそひそ話をするかの如く声を小さくして話てしまった。 「わかりました、お手伝いしましょう。盆栽人口が増える事は私も嬉しいですから」 と声を小さくして部長にいった。 「それでは、今度の日曜日に、宝玉堂さんで 十時に、物はそこで・・・」 犯罪者のごとく言うと、部長も 「では、そこで落ち合おう」 と二人で何か悪いことでもするかのようだった。 部長が静かに去ってから、それを見ていたらしく マセガキ菅野君が私のところに来て、 「美由紀先輩、部長と何ヒソヒソ話してたんですか 先輩はおじさんが好きなんですか?」 「何、馬鹿なこと言ってんの、そんなこと 言っている暇があったら、仕事しなさい」 そう、怒ると 菅野君はそそくさと逃げるように自分の席に 戻って行く。 日曜日が来た、私は電車に乗って 宝玉堂に向かう。 宝玉堂に着いたのは、ちょうど十時、 部長は、既に着いていて私を 待っていたようだ、 車から降りてきて、私に手を上げている。 私も、ペコリと頭を下げ、部長に挨拶した。 そうして二人で店の中に入っていき、 まずは部長に、宝玉堂のおじさんを紹介した。 おじさんに事情を説明して、まずは基本的なことから部長に教えることにした。 宝玉堂のおじさんが、 「まず、『盆栽』この字の意味はご存じかな?」 「いいえ、知りません」 「まずはだ、盆栽の『盆』の字と言うのは、鉢の事、そして『栽』 というのが、植物の事を言うんだよ、 あとな、盆栽と園芸植物の違いは、わかるかな?」 「いえ、わかりませんが」 「それはだな、園芸植物は樹木の成長に合わせて鉢を変えるが、 しかし盆栽は、樹木と鉢をいかに合わせるか、 考えながら、なるべく小さめの深さの浅い鉢に植え替える。 そして、形を自分で整えていき、小さな空間で いかに、壮大な風景を作り出し、表現できるか それが、作り手の醍醐味なんだよ。」 (おじさん、すごい、良い事言うね~) 私も感心してしまった。 「それと、盆栽には、『裏』と『表』があるんだ、 『表』というのは全体的に見て前に倒れて、 お辞儀をしているように見える方が、 『表』で、盆栽は、表から見ることを前提とし、 尚且つ、『表』から見て左右どちらかに 傾ける、これを流れと言ってな、この辺も 注意しながらそれをいつも気にしながら、 樹作りを、して行くんだ。 盆栽にも色々種類があって、 松柏盆栽、雑木盆栽、花物盆栽、実物盆栽、草物盆栽この五種類に分類されていて、 これが一般的な物かな。 わしは、小林○雄さんの盆栽が大好きでな、 すばらしい盆栽を作る人の事は 『盆栽 作家』 と呼ばれているんだよ。わしも作家さんなんて呼ばれてみたいもんだ。 「おじさんの盆栽もどれを見ても素晴らしいよ、だから、宝玉堂に盆栽を手掛けている人たちが来てくれるんだよ、おじさんも立派な作家さんだよ」 「ありがとう、霞ちゃんにそう言ってもらえると嬉しいよ」 おじさんが照れくさそうにそう言った。 それから、必要な道具を出して、 剪定ばさみ、又枝切り、アルミのワイヤー、ペンチ(ヤットコ) 根切りばさみ、同線、ニッパーなどなど 一つずつ、おじさんが使い方を説明していく。 道具的にはそんなに種類はないが、針金掛けなどが慣れないとうまくいかない。 まぁその辺は、私とか宝玉堂のおじさんに 頼めば済むこと。後は選定も一つのコツというかセンスがいる。 おじさんが部長に、また説明を始めた。 「初心者向けには五葉松の盆栽が良いかも ある程度盆栽として作り込まれているもの から初めて、手入れの仕方などを 少しずつ覚えながら育てていくのがいいかな」とおじさんが言う。 「他にも黒松や、赤松などがあるけど、 これらは夏の初めに芽切りという作業が必要で、芽切りというのは、枝の先から出る芽を 切ることで枝の伸びを抑えるんだ。 これを行わないと、枝が先へ先へと 伸びてしまって、盆栽には程遠い、 姿になってしまう、しかしこの五葉松 と言うのは、枝の伸びがあまり強くないので 芽切りを多少、怠ってもそれなりの 株姿になってくれて樹の形を、維持しやすい だからこれがオススメかな」 そう言って、一つの盆栽を持ってきた。 枝の形が整った美しい盆栽だ。見覚えがある この前、これが欲しいけどいくらだか聞いた 盆栽だった。確か一万五千円って言ってたような 部長もその枝ぶりが気に入ったみたいで 「よし、これにしよう、これにしますこれはおいくらですか」 と聞くとおじさんは、 「お客さんは、初心者で初めて家に 来てくれたそれに、霞ちゃんの会社の 部長さんと聞いているからもう、 大サービスで五千円でいいよ」 「ちょ、ちょっと待っておじさん この間は、私に一万五千円って 言ったじゃない」 「この人は、霞ちゃんのお偉いさんなんだろうだから、大大大サービスだよ」 私は「おじさんずるい」と言いながら 部長に「よかったですね」と吐き捨てた。

応援コメント
0 / 500

コメントはまだありません