あれからも私は毎週木曜の深夜の1時に南雲さんの家に行き、ヌードモデルの仕事をした。 次第に私の電子マネーには未成年の財産としては信じられないくらいの金額の数字が並ぶようになった。 思いきって同居の彼とパーッと贅沢したかったが、世は未だにコロナ禍の中であり、旅行などの遠出の外出は夏が訪れてもできそうになかった。 私たちはやはり狭いワンルームの部屋の中でネット通販でたまに豪華な美味しい食べ物などを注文するなどして、楽しく過ごした。 他にも値の張る家具や家電を買い揃えようと提案したが、ミニマリストの彼は部屋に必要以上の物を増やしたくないようだった。 後は専ら可愛いブランドの服を自分に買い与えたり、使い道が思い付かなくなると全部電子マネーに入金した。 私たちは外の世界の他の人達とはなるべく関わらない生活に入っていた。 コンビニに彼と買い物に行き、私は人足先に外に出てアイスコーヒー片手にマルボロを吹かしながら日陰で彼が出てくるのを待った。 いつの間にか煙草も覚えてしまった。 収入があると色々やってみたくなる。 今日は曇りだが、いよいよ暑くなってきたので髪はポニーテールにしていた。 大分伸びたのでそろそろ切ってもいいかな。 「よっ、お待たせ」 私は彼が出てくると笑顔で出迎えた。 彼とバイク置き場へと移動。 そして私は彼の中型のバイクの後ろに股がった。 座りながら煙草を加えて煙を吐いていると彼が私に忠告した。 「タバコはよくねーぞ。肺が真っ黒になる前に止めな」 そりゃいつかは止めるだろう。 だが、今ではない。 彼は前に乗り、エンジンを入れてバイクを発進させた。 生暖かな風が顔に当たり通り過ぎていく。 このバイクは私が彼の部屋に来る前に既にあったものだ。 古い中古ものだが流石に盗んだものではないだろう。 運転免許も見せてもらった。 彼の事だ、きっと安く譲ってもらったのだろう。 彼と共にやっと私は一人前の青い春を迎えているのだった。 この幸せは永遠に続いて欲しいな。 南雲さんのアトリエで私は一糸纏わぬヌードでポーズを取っていた。 モデルとしてのポージングも大分様になってきた。 ポーズの種類も沢山私の頭の中にストックされ、南雲さんに指示されれば空でそのポーズを取ることが出きる程だった。 ショートボブに髪型を変えた私はその夜も得意気にポーズを決めて黙々と彼の絵のモデルを務めていた。 一段落して、私はベッドに裸のまま腰かけた。 南雲さんはゴソゴソ棚の所で何かしていたが、終わると私の側に来てベッドの傍らに腰かけた。 (……ん?) 南雲さんは私の大腿に手を置いた。 (……!) そして、私の大腿を撫で始めた。 私は驚いたが、逃げなかった。 「今日はいつもより多く給与を出しますから」 そう言って南雲さんはもう片方の手で私の背中を撫で始めた。 そうか。 どうしよう、このまま身体のタッチで終わるなら我慢しようか。 お金に目が眩んだ訳ではないと自分に言い聞かせても自信はなかった。 更に彼の手は上半身の前へと伸びていき、私の乳房を揉み始めた。 「………ん」 思わず吐息が漏れる。 尚も南雲さんは優しく私の身体を撫でてくる。 私の肌を滑る彼の手の摩擦音が何かの金属音のように聞こえた。 すると南雲さんは私の胸にしゃぶりついてきた。 そして舌でその小さな乳首を愛撫してきた。 「…うわ……っ」 くすぐったいが、正直少し感じてもいた。 だが、一方でこのままエスカレートすれば大声だして叫ぼうかとも思った。 そうすれば真夜中だ、すぐ誰か通報して警察が来るだろう。 彼はそのリスクを考えているのだろうか。 更に彼は私の唇をも奪った。 臭い息と共に汚ない舌が中に侵入してくる。 「ん………んんっ…ん」 口腔を残々舐め回されると私の頭はトロンとしてきて思考が鈍ってきた。 「……………………ん…」 彼はこういうのも馴れているようだった。 これまでも雇ったモデルの子ともそうしてきたのだろう。 私は身体の力も徐々に抜けてきた。 そして、ついに南雲さんは下半身のヴァギナに手を付けてきた。 「………あっ…………あっ……」 彼は私の左耳に舌を這わせながら大陰唇、小陰唇と順に開いてめくり、クリトリスを親指の付け根で圧迫しながら指を挿入してきた。 「…うああっ……はあっっ………」 私は叫ぶことなどすっかり忘れていた。 私は顔を真っ赤にして声をあげて激しく喘いだ。 そしてその後も好きなように身体を弄られ私は最終的にオーガズムに達した。 「大丈夫かい」 私は全身の力が抜けきり、ベッドの白いシーツの上で仰向けになっていた。 額からは汗が滲んでいた。 喉もカラカラだ。 「今夜はこれで終わりです。お疲れ様」 それはそうだ。 もうこれ以上仕事なんて出来そうにない。 服を着た私は南雲さんからいつもより厚めの茶封筒をもらった。 リビングで出された熱いコーヒーをゴクゴク飲んだ。 「ふぅー………」 オーガズムなんてのは去年実家の自室で自慰して以来だ。 他人の手によるのは初めてだった。 キスも昔レズ趣味の同級生の子とふざけ半分でしただけだ。 男性体験は過去に1回だけで、仲が良かったクラスの子の彼とした。 好きだったわけでなく、誘われて興味本意でしただけ。 だから何の感動もなかったし、それっきりだった。 私としては同居の彼と出会うまでは男など関心ないに等しい存在だった。 「また来週もお願いしたい…」 南雲さんはそう言って私を送り出した。 帰りのタクシーの中で私は茶封筒の中のお札を数えた。 「こんなに……!」 それは想像以上のお金だった。 ただの援交でもここまではもらえまい。 売れっ子の芸術家なのか、それともそれだけ儲かる職業なのかよく分からなかった。 アパートに着く頃には朝日はすっかり天に登って熱くなっていた。 彼はとっくに起きていた。 「おつかれさん、今日は遅いお帰りだな」 「うん、ただいま」 何も知らない彼はフライパン片手にいつも通り屈託なく私を労った。 今日もらったお金も即日全額私の電子マネーに入金した。 彼に私の残高を見られることはないが、やはり後ろめたさはあった。 このお金はきちんと考えて後々私たちの為に使いたい。 夏も盛りを迎え、そして去り秋の足音が聞こえてきた。 私は南雲さんの家に通い続け、その度に身体を預けた。 そしてその度に沢山の給与をもらった。 それ以外は同居の彼の部屋からほとんど出なかった。 彼もほぼ毎日一日中に居た。 そして彼は知らないが、私はこの近辺でもお金持ちの部類に入っていた。 ヌードモデルの給与にはあまり手を付けなかった。 文字通り毎週身体を張って稼いだのだ。 やはりここぞと言う大事な時に使いたかった。 南雲さんには婚約者がいるみたいだ。 彼がその婚約者とのツーショットの写真を私に見せてくれたからその存在が分かった。 その人は私より全然大人の女性でその身体も服の上から分かるくらい立派だった。 私がこの女性に南雲さんとの深夜の卑猥な密会を知らせれば彼は終わりだ。 でもそうする子ではないと彼も踏んでいての事だろう。 だから写真を見せた。 全て彼に見透かされている様に感じた。 そういう人が居ながらにして私のような未成年の女と深夜に淫らなことする。 男というのは随分勝手な生き物だなと私は自分の父親も含めて心底思い知らされていた。 でも同じ屋根の下に住む彼だけは違うと思っていた、のだが。 彼の信じられない姿を見たのは晩秋、マフラーも必要なり始めた頃だ。 特にその日は寒かった。 私たちの住むアパートからいくらか離れた隣町の公園の近くで私は目の不自由な男性から道を聞かれていた。 その人は全盲ではなく弱視の様だった。 話しているうちにその男性は持っていた杖を落とした。 そして拾おうとしてよろけてしまい、そして私の身体に手を置き身を預けるみたいに寄りかかる感じになった。 「何してんだ!お前!」 声を上げて彼が公園のトイレから出てきてその弱視の男性を強くどついたのだ。 すると更に男性はバランスを崩してアスファルトの地面に倒れこんだ。 なんとその上から彼は男性に蹴りを入れてきたのだ。 「ちょっと!やめて!違うのよ!」 私が制止しようにも彼は蹴るのを止めない。 何ということか、彼は頭に血が昇るとこうなってしまうのか。 強引に彼を男性から離すと 「逃げよう!」 と言って彼は私の手を引っ張って走った。 男性は倒れて動かないままだった。 結局私もその場から逃げた。