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「それでは、本日のゲストに登場していただきましょう!」  三年前、人気司会者が司会を務めるテレビのトークバラエティ番組にゲストとして呼ばれたのが、私の「石好きタレント」としての活動の始まりだった。珍しい特技や趣味を持っている人を紹介する番組だ。 「みさきさんは、なんと……石が好き過ぎるタレントさんです!」 「石ーっ?」  雛壇に座る芸人さんが、大げさなリアクションでスタジオを沸かせる。 「みさきちゃんは、いつから石が好きなの?」  スタジオのざわめきが収まったタイミングを見計らって、司会者が私に話題を振る。 「小学生の頃なんですけど、家族でお母さんの実家に遊びに行ったときに、近くにある河原に落ちていた石の模様をとても気に入って、拾って家に持って帰ったんです。それから、その河原に行くたびに石を拾ってきて、気がついたら、他の場所からも石を拾ってくるようになって……」 「今日は、コレクションされている石を実際にお持ちいただいたんですよね」  司会者の横でサブ司会者を務める女性アナウンサーが促すと、ADさんがスタジオの中央へカートで石を運んでくる。 「ご自宅にも、まだたくさんあるようで」  アナウンサーがそう言うと、スタジオのモニターに私が撮ってきた自宅の部屋の棚の上に並ぶ石のコレクションの写真が映し出される。すると、観客席から、「わー!」という驚きの声が上がる。 「これは……本当に石が好きなんだね! でも、石のどういうところが好きなの?」  司会者が聞く。 「石って、似ているように見えるものでも、すこしずつ違うんです。形とか、色とか、模様とか。そこが面白くて、つい集めてしまうんです。たとえば、今モニターの写真に映っている、二つの茶色いのとか」 「いやいや、ぜんぜん違いがわからないよ!」  芸人さんがツッコむと、観覧席で笑いが起こる。  私がテレビに出演するときのトークの流れは、いつもだいたいこんな感じだ。  私がテレビに出演するときには、かならず石が一緒だ。事前に、番組のスタッフさんから石を持ってくるように言われることもあるけれど、何も言われなくても、石は持っていく。みんなが求めているのは、私の「石好きタレント」としてのキャラクターなのだろうから。本当は、「石好きタレント」としてではなく、役者として見てもらいたい。でも、声がかかるだけ恵まれていると、自分で自分を納得させてきた。  私から石を取ったら、何が残るんだろう。 「メイクの準備ができました。メイク室へ移動をお願いします」  ADさんが、楽屋へ私を呼びにやってきた。石を探すのは中断し、ADさんを追って、メイク室へと向かう。 「こちらで、お願いします」  場所を示すと、ADさんはどこかへ走り去っていった。 「よろしくお願いします」 「よろしくお願いします……あれ、みさきちゃん!」 「三上さん!」  三上さんは、以前、テレビのバラエティ番組の再現ビデオに出演したときにメイクをしてくれた人で、そのときに仲良くなって、SNSでフォローし合っている。 「元気そうで、よかった。最近、よくテレビで見かけるけれど、現場でご一緒するのは、ひさしぶりかな?」 「はい、そうですね」 「ツイッター、いつも見てるよ。石の写真の投稿、ずっと続けていて、すごいね」 「ありがとうございます。好きで始めたんですけど、たまに誰かにやらされているみたいに感じるときがあって、なんか最近、ちょっと疲れてきちゃって……」 「難しい時代だよね。タレントも一般の人たちも、みんなネットとかでのセルフプロデュースを求められるから」 「ですね」 「メイクの世界にも、テレビや雑誌でよく見かけるようなセルフプロデュースの得意な人はいて、メジャーな仕事をバンバンしているのを見て、ちょっと羨ましいなと思うこともあるけれど、そういう人には負けられないと思って、誰よりも丁寧に仕事をするようにしたんだ。そうしたら、実力を認められて、いろんな現場に呼んでもらえるようになった。いろんなやり方があるけれど、本当に大切なものって、何なんだろうね」

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