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 麻美さんには、お礼に父の死顔の写真を見せた。あまりにもきれいだったので、私はスマホで写真に納めておいたのだ。それをデータで送ってあげた。  それを見て、唇をゆがめたのは、涙をこらえたからだろう。 「実物よりも、いい男みたいね」  と笑う。そのくらい、すでに彼女は私に打ち解けてくれていた。 「実物もよかったよ」  と私はわざと唇を尖らす。 「父は、おばあちゃんに似てたの。おばあちゃんは、評判の美人だったらしい」  祖母は早くに亡くなったので、私の中にははっきりとした記憶はない。でも、見せてもらった写真は、確かに整った顔立ちの日本風の美人だった。  そんな話をしていたら、またふいに私の目から涙がこぼれ落ちた。麻美さんは小物入れからハンカチを出して渡してくれた。洗剤の香りが残っている。洗ったばかりのハンカチだ。  私は彼女の部屋で泣くだけ泣いて、夕刻にそこを後にした。夕食を誘ってくれる彼女に丁重に断りをいれて。でも、また会ってください、と懇願して。  帰り道も、ずっと私の頬は濡れていた。

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