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 わーわー、キャーキャーと黄色い歓声があがっている。  昼休み。コートの半面を利用したストリートバスケに少女たちが興じている。  2on3。二人組で三人を相手しているのは津山里美と菊池綾子だ。  綾子は里美のサポート役に徹し、自らはシュートを打たない。  ボールを持てば必ず里美にパスをだす。  今度もまた、綾子からボールを受けとった里美が、鮮やかなピボットからシュートを決めた。 「うまいもんやな」  ベンチでストバスを眺めていた知可がつぶやいた。 「さすが空手使いや、運動神経ええわ」 「知可はなにか運動やったことないの? ケンカ以外に」  隣に座っているなつみが訊いた。 「ケンカは運動ちゃうやろ。  ……そういや、なんもやってけえけんかったなあ」  ため息交じりにいう。両親が離婚して父親に引き取られた知可は、小学生のころから働きに出された。  父親の姉、伯母にあたるひとがスナックを経営していて、小学生のころは皿洗い、中学生になったらカウンターに立つようになった。  とはいっても接客はしない。仏頂面で酒とつまみの注文をきくだけである。 知可は店内でたびたび酔客とトラブルを起こした。  酔っ払った勢いで、しつこくさわりにくる客を問答無用で叩きのめし、追い出したのだ。 (……ろくな人生やないな)  ケンカというものはいったんはじめてしまうとクセになる。怒りが増幅される。  ケンカ中毒に陥った知可は繁華街でも不良相手に暴れまわるようになり、ある日警察につかまってここに送られたのだ。 「連城、連城知可はいるか!?」  野太い声に追想を破られ、知可は現実に引きもどされた。  顔を向けると法務教官が建物の出入り口に立っている。  知可は片手をあげ、教官をみた。 「ここにおるで」 「面会だ」  それだけいうと、教官という名の看守は踵を返した。 「面会?」  一体だれが……?  女子少年院送りになった知可にはだれも関わろうとはしなかった。  今更、どこのどいつがお為ごかしをいいにきたのか? 「知可……」  よほど不審な顔をしていたようだ。なつみが心配そうな声をだした。 「大丈夫や。いってくる」  それだけなつみに告げると、知可は接見室のある管理棟へ向かうのだった。   第6話につづく

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