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 ゴシック系やサブカル系、アングラ系の人達が来店する中、見るからに普通の人が入ってきた。背がウチよりもちょっと高いぐらいで、小焼くんと比べたらかなり差のあるような、男性にしては低身長って言われそうなくらいの人。大きな目が優し気に垂れてて、可愛いの。 「女装でもするんですか?」 「何で開口一番それなんだよ」 「いえ、ワンピースを見てたので……」 「ふゆが好きそうなデザインだなって思っただけだよ」 「今思えば、貴方が女装すれば、スイーツビュッフェに入れたのでは?」 「変なこと考えないでくれよ!」  小焼くんのお友達っぽいやの。ふゆって言うたから、もしかして、ふゆちゃんのお兄ちゃん? 「あの……」 「おっ。わりぃな、挨拶が遅くなっちまった。おれは伊織夏樹いおりなつき。ふゆの兄だよ。妹がいつもお世話になってます!」 「あ、あ、こちらこそ、ふゆちゃんにはお世話になってますやの」 「ふゆに写真見せてもらってたけど、実物はもっと可愛いな」 「私の彼女ですよ」 「あいあい。わかってるって。けいちゃん、小焼をよろしくな」 「は、はいやの」  夏樹くんは人懐こい笑みを浮かべながらウチの頭をなでなでしてくれた。良いお兄ちゃんって感じがひしひしと伝わってくるの。 「それで、貴方は何しに来たんですか?」 「おまえなぁ、おれにメッセージ送っといて忘れてんのか?」 「ああ……。そういえば送りましたね。しかしもう解決したので良いです」 「呼び出しておいてそれかよ!」  小焼くんと夏樹くんは仲良くお話してる。ふゆちゃんが親友って言うてたくらいやから、とっても仲が良いみたいやの。この隙にウチはさっきのスイーツビュッフェの写真と特典のミニぬいぐるみの写真をタイムラインに投稿しておいた。 えへへ、皆見てくれたら良いなぁ。行きたがってる子もクラスにたくさんおったから、こんなところやったよって共有したいの。すぐにいいねがついて、リプライも届いた。「それって、カップル限定の特典だよね!」って。あ、そういえば、そうやったの……。それをきっかけに、続々とリプライが届く。「けいちゃん彼氏できたの?」「彼氏の写真見せて!」「彼氏紹介して!」「けいちゃんが男のモノになっちゃったあ!」って。クラスの女子で作ってるグループトークにも「速報! けいちゃんに彼氏の影!」ってメッセージが送られてて、ウチ宛てのメッセージがいっぱい届いてるの。どうしょ……。 「けい?」 「は、はいやの!」 「スマホを持ったまま動いてなかったですが、どうかしましたか?」 「その、さっきのビュッフェと特典の画像をタイムラインにアップしたら……お祭り騒ぎになってしもたの」 「ああ、ふゆから大丈夫か聞いてくれってメッセージがとんできたや」  夏樹くんが苦笑いしつつ頬をかいてる。小焼くんは首を傾げてた。きっと、どういうことかわかってないんやと思うの……。夏樹くんが懇切丁寧に説明してくれてるんやけど、それはそれで恥ずかしくなってきた。 「それなら、こうしたら良いですかね?」  小焼くんはウチを引き寄せる。夏樹くんがすぐにスマホをこっちに向けてカシャッて音がした。 「ほい、これで良いか?」 「犯罪臭いですよ」 「おまえが屈まないからだろ。けいちゃん、おれに連絡先教えてくれ」 「は、はいやの」  夏樹くんとアプリの連絡先を交換する。あ、アイコンが柴犬やの。可愛い。そういえば、ふゆちゃんがお家で柴犬飼ってるって言うてたの。ふゆちゃんと間違えて連絡しやんようにしな……。ピロンッて音がして、夏樹くんから画像が送られてきた。今撮ったばかりの画像。小焼くんがギリギリ切れてて、確かに犯罪っぽいの。 「連絡先ありがとな。そんじゃ、幸せな二人を見せつけられるだけだったから、おれは帰るとすっかな」 「わかりました。また何かあったら呼びます」 「おれの都合も考えてくれよ。おまえはとりあえず自撮りしておけ。そうすりゃ見切れずに撮れるだろ」  と言い残して夏樹くんは去っていった。小焼くんは少し考えた仕草をしてから、スマホを弄る。そんで、屈んでウチと頬をぴったり合わせて自撮りをした。いきなり頬を合わせられて驚いてまう。少しおさまってたドキドキがぶり返したやの。スマホが新着メッセージを報せる。小焼くんから今撮ったばかりの画像が送られてきた。間違えて三回ぐらい保存してもうた。スクショもしてもうた。落ち着いて、ウチ、落ち着いて! 「これを送っておけば良いでしょう?」 「う、うん……」  ウチは自撮りを早速タイムラインあげることにした。グループトークに投げたら、通知が溜まってる子に悪いやの。ウチ、嫌われてしまうやの。それは嫌やの。タイムラインにあげたら、すぐにいいねがついた。そんで、またリプライが続々と届く。うぅ、やっぱり恥ずかしくて消したくなってきたやの。

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