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 その後は駅まで送ってもろて別れた。お家まで送ってくれるって言うてくれたけど、小焼くんの最寄駅を聞いたらウチと逆方向やったし、まだ早い時間やから、遠慮しといた。もっと遅くなったら、送ってもらお。も、もし、終電が行ってしもたら、お泊まり、とか……、あ、あかんの! えっちなことはまだ駄目やの!  お家に帰って、お風呂に入って、一息ついてから、リングとストラップの写真を撮った。  これ、タイムラインにあげたらまた騒がれるんかな? でも、でも、見てほしい、から。  ウチは深呼吸して、投稿ボタンをタップする。ドキドキするの。いいねとリプライがすぐにとんでくる。反応がたくさん来る。祝ってもらえて嬉しい。  ピロンッ、新着メッセージの通知。小焼くんからやの! 今日はありがとうございますって、こちらこそやの! えへへっ。嬉しいの。こんなにかっこいい人がウチの彼氏って嬉しいの。自撮りの写真をスマホのロック画面に設定した。それから、夏樹くんが送ってくれた雑誌の写真をホーム画面に設定した。顔がにやけてまう。かっこいいの。小焼くん、とってもかっこいいの。  小焼くんに返信した後、グループトークを開く。写真はもう見てもらえたと思うから、ありがとうってだけ伝えておいた。ちょっとしてから、個別のトーク画面にメッセージが届いてた。 「小焼くんって水泳部なんや……」  水泳部の神田くんが教えてくれた。去年の国際大会の代表選抜で泳いでるとこ見たことあるって……。なんかよくわからへんけど、すごいやの。だから、あんなにムキムキなんや。泳いでるとこ見てみたいなぁ。きっとかっこいいの。想像しただけで、顔がにやけてまう。もー、幸せやの。  幸せな気持ちに包まれたまま、ウチは寝落ちしてた。  月曜日。いつものように学校の最寄駅にいつもの時間に着いた。もしかして、小焼くんおるかな?  周りをきょろきょろ見るも、人がいっぱいやの。 「けいちゃん、おっはよー! タイムライン見たよー。やったね! イケメンの彼氏ゲット!」 「ゲットやなんて……」  改札を出たところでふゆちゃんと出会った。ふゆちゃんはウチの肩をぺしぺし叩く。ちょっとだけ痛いやの。  小焼くんの姿は見えへんかったから、ふゆちゃんと一緒に登校する。 「そういえば、ふゆちゃんのお兄ちゃんに会ったの」 「うん。兄ちゃんから聞いてるよ! けいちゃんのこと、可愛い子だなって言ってた!」 「そ、そんなことないやの。ウチより可愛い子はたくさんおるやの」 「そうだとしても、けいちゃんは可愛いんだってば!」  ふゆちゃんはまたウチの肩をぺしぺし叩く。可愛いって言われて嬉しいけど、恥ずかしいの。  教室に入れば、すでにおった子らが寄ってきた。 「けいちゃん! 彼氏できたなら早く言って! うち、いきなり失恋した気分だよぉ」 「写真見た! 夕顔くんマジかっけーな!」 「ほんともー! 大学生の彼氏ってマジ勝ち組じゃんかー!」  もみくちゃにされてしもてる。すごく盛り上がってしもてる。頭をなでなでされたり、肩をぺしぺしされたり、みんなすっごく祝ってくれてるのがわかって嬉しい。でも、少し恥ずかしいの。  チャイムが鳴って朝のホームルームもすぐに終わった。一限目の準備せな。えっと……保健体育……あ! 「けいちゃんどうしたの?」 「教科書忘れてしもた……」 「あらら、そりゃ大変!」  と返すふゆちゃんの机の上には何も乗ってなかった。 「けいちゃん、あたしも忘れちゃった」 「B組で借りてくるの!」 「ごめんね! お願いしまーす」  お隣のクラスに入る。ここには演劇部の子がおるから、お話しやすいの。隣なら時間割もそんなに変わらへんから、教科書持ってるはずやし。 「けいちゃんジャン! おっはー!」 「おはようやの。あ、あの、志乃(しの)ちゃん、保健体育の教科書持ってへん?」 「あー、バッチリ持ってる! けいちゃんが忘れ物なんて珍しーこともあんね?」  志乃ちゃんはとても派手な子。ウチとは正反対で、ギャル系っていうんが本当にぴったりやと思う。見た目は派手やけど、中身は優しくてあったかいの。彼氏は社会人って言うてた。彼氏と遊ぶからってサボる時あるけど、部活にも来てくれる。女優になりたいって話してくれたんを覚えてる。 「はい、ドーゾ! A組の子からけいちゃんに彼氏できたって聞いたから、あーしもお祝いつけといたよ」 「ありがとうやの」  何かが挟まった教科書を抱えて教室に戻る。 ふゆちゃんが机をぴったりくっつけてた。もー、ちゃっかりしてるんやの。 「けいちゃんおかえりー、ありがとー」 「ただいまやの」 「あれ? 教科書膨らんでるね?」 「志乃ちゃんが彼氏できたお祝いって……」  教科書を捲る。挟まってた小袋が落っこちた。ピンク色の可愛い小袋やった。輪っかのようなのが入ってる。ドーナツにしては細いからプレッツェルかなぁ。 「けいちゃん、それって……」 「何やの?」 「ゴムだよぉ!」 「えっ!」  持ってた小袋を落として、慌てて拾う。も、もう! 志乃ちゃんのイタズラには困るやの。えっちなことは、まだ駄目やの! 「さすが志乃ちゃんだねぇ。あたしもお祝いに兄ちゃんの部屋にあるやつ持ってきてあげよっか?」 「そんなことしたら駄目やの!」 「あはは、けいちゃん顔真っ赤だよぉ」  恥ずかしくて顔が熱い。火が出てるんかって思うくらいに熱いの。クラスの子らがニコニコしながらこっちを見てるのも恥ずかしいの。ゴムってこんなんなんや、初めて見たの。うぅ、でも、これ、どうしたら良いんやろ。 「財布に入れておけば金運が上がるって兄ちゃんが言ってたから、けいちゃんも入れておけば?」 「う、うん。そうしておくの」  せっかくお祝いとしてくれたんやから、返すのも悪いやの。ウチはゴムをお財布になおした。いつかこれを使う時が来るんかな? ちょっぴり想像して、ほっぺが更に熱くなった。  授業を受けて、教科書を志乃ちゃんに帰す。志乃ちゃんはケラケラ笑ってた。さすが、社会人の彼氏がおる子は違うの。そういうこと、何回もしてるって。ホテルにも何回も行ってるって。志乃ちゃんは見た目が大人っぽくて、色気もあるから、十八歳以上に見えるの。ウチは、まだ中学生に間違えられるのに。髪も憧れのロリータモデルさんの真似をして、同じようなピンクのインナーカラーを入れてもろたのに、更に幼く見えるって。でも、可愛いから仕上がりには満足してるの。  スマホがブルブル震えた。あ、小焼くんからメッセージやの。 「見るからにニヤニヤしちゃってぇ。彼氏からメッセでも来た?」 「うん! えっと、授業が終わったら会いたいって!」 「うっわぁ、ラブラブすぎて、こっちが恥ずかしくなっちゃうよ。良かったねぇ。放課後デートだ!」 「えへへ、嬉しいの」 「良かったねぇけいちゃん、今日部活休みで!」 「うん!」  顧問の先生が大事な会合に出席せなあかんからって今日の部活はお休み。ちょうど良かったの。明日やったら、会われへんかったの。小焼くんに返信をしておいた。すぐにスタンプが返ってくる。『迎えに行きます』って、猫がバイクに乗ってるスタンプやった。本当に猫が好きみたい、可愛いの。

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