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「女の子の方から『付き合ってください!』なんて来るのに、付き合い始めたら、『イメージと違う』って、フラれんだよ。その点、けいちゃんはそんな子らと違うから良かった。小焼から言われたんだろ?」 「う、うん。そうやの」 「あいつの両親、海外に居るし、あいつも少しズレてるとこあっけど、気長に付き合ってやってくれ。初めてきちんと小焼から付き合いたいって思った相手なんだからな」 「はいやの」  ニカッと笑って夏樹くんはウチに頭をなでなでしてくれた。あったかくて優しい手やったの。  戻ってきた小焼くんはほんの少し驚いた顔をして、席に座る。 「仲が良さそうですね。何を話してたんですか?」 「ははっ、嫉妬かぁ? おまえって惚れた女には独占欲強いタイプなんだな」 「そうでもないですが」 「どうだかな。おまえが散々フラれまくってた話をしてただけだよ」 「んなっ」 「すーぐ、別れんだからな。今度は長続きさせろよ」 「長続きって……」 「長続きは長続きだよ。けいちゃんにフラれねぇようにな!」  夏樹くんはけらけら笑ってる。小焼くんは元からへの字口やのに更にムッてさせてた。唇が少し尖ってるやの。  ウチはアイスティーをストローでちゅうっと吸う。やっぱりオシャレなお店やから、紅茶も良い感じのやつやの。香りがすーって抜けていって、ほのかに甘く感じたの。  お話してたら、店員さんがテイクアウトの準備ができたからって持ってきてくれた。これを夏樹くんは受け取り、すぐに席を立つ。 「そんじゃ、引き続きデートを楽しんでくれよな!」 「夏樹!」  小焼くんの頭をぽんぽん軽く叩いてから夏樹くんは笑って逃げていった。仲良しさんで楽しいやの。  再びテーブルは小焼くんとウチの二人だけになる。小焼くんは噛み癖があるんかストローをガジガジ噛んでるの。ストローがぺちゃんこになってしもてる。  なんかお話しせな……。このままやと変な沈黙になってしまうの。アイスティーも飲み干してもうたし、誤魔化しもできへんの。あ、そうや! 「小焼くんの飼ってる猫ってどんな子なん?」 「白くて小さい猫ですよ。拾ったので雑種だと思います。こんな子です」  小焼くんはスマホの写真を見せてくれた。白くて小さい可愛い猫やの。お目めが青くて、ウチとお揃い。良いなぁ、ウチも猫飼ってみたいの。でも、今は居候中やから……高校卒業したら飼いたい。きっとその頃にはお金も余裕があるはずやから。 「可愛いの。お名前は?」 「しらたまです」 「しらたまちゃん……。可愛い名前やの」  お団子なんかなって思う。白玉団子。小焼くんは食いしん坊やから、食べ物の名前つけてて可愛いやの。撫でてみたい。きっとふかふかで幸せな香りがするんやと思うの。猫を吸うのは健康に良いって誰かが言うてたくらいやから。 「見に来ますか?」 「え!」 「興味があるのかと思ったんですが、違いましたか?」 「ううん! 見たいの! しらたまちゃん抱っこしてなでなでしたいの」 「それでしたら行きましょうか」  小焼くんはお会計伝票をさっと素早く取って歩いていく。奢ってくれるんやと思うけど、それも悪いの。断られてもせめて飲み物代くらいは出したいの。  追いついた時には既にお会計は済んでた。小焼くんがレシートをなおしてるとこやった。そのままお店の外に出てしもたから追いかける。 「小焼くん、さっきのお代いくらやった?」 「出さなくて良いですよ」 「でも、でも、せめて、飲み物代くらいは出したいの」  ウチはお財布を開く。ピンクの小袋が見えた。ゴム入れてるの忘れてたの。せめてもう少し目立たないところに入れたら良かったのに、ウチのばか! 小焼くんとばっちり目が合う。あ、あ、あ、見られてしもた。どう思われたんやろ、恥ずかしい。 「……これ、いつも財布に入れてるんですか?」 「い、いつもは、入ってへんの」 「そうですか。……貰って良いですか?」 「ふぇっ、は、はい!」  こんな道端で何してるんやろ。小焼くんはウチのお財布からゴムを取って、ズボンのポケットに入れてた。うぅ、どう思われたか全くわからへんの。小焼くんの表情も声の調子も全然変わらへん。  お財布をカバンになおしたら、すぐ手を繋がれた。手が熱いくらいに、あったかい。ぎゅっ、と軽く握ってくれるのにドキドキしてまう。

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