気ままな遠出(金切山編)
北へ(金切山編)-上

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 4月。寒い季節が過ぎ、春の暖かさが感じられ始める季節。私は、北の大地へ向かった。理由はない。なんとなく、行きたくなった。強いて言えば…すこし涼しさが恋しくなったのかもしれない。なぜならば、今年の春は、例年とは違い、少々気温が高いのだ。ニュースでも夏日、と言われてしまうくらいである。  北の地域においても、さほど寒くはないようで、普段は寒くて行く気にならないから、ちょうどいい機会だろう。と、駅で後付けした。そんな自分に、クスッとしながら私は、列車に乗り込む。  夏日、とはいってもまだ4月である朝は冷え込む。冷えた手を温めながら席に向かった。 北の大地へ向かう蒸気機関車。最近は、電気で動く列車が増えてしまい、機関車などは、めっきり姿を、消してしまった。しかし、この路線では、未だに機関車を特急として運行している。鉄道好きとしては、とても嬉しい事だ。さて、定刻となり、汽車は警笛をならし、車輪を若干空転させながら、ゆっくりと走り出す。現在の時刻は、朝の5時と20分を過ぎたところだ。少し早いが、朝ごはんにしよう。そう思い、ひとつ後ろの、食堂車へ向かった。 食堂車、といってもこの車両に席はない。調理するための厨房があり、そこを眼鏡をかけた、お婆さんが1人で、運営している。  私は、厨房の上と下、それと奥に貼られたメニューを見て、お婆さんに声をかけた。 「すいません、注文、いいですか?」  するとお婆さんは調理の手を止めこちらに来てにっこりと笑う。 「はいはい、ご注文は何かね?うちのは、どれも、安くて美味しいよ。」 「じゃあ…この、ミニサンドと、ホットコーヒー、あと…揚げ卵をください。」 「はいよ〜、コーヒーはブラックでいいかい?」 「はい、お願いします。」  料理の完成を待つ間、おばあさんは、車内は寒いから、と言ってコーヒーではないものが入った紙コップを手渡してきた。魚介類のいい香りがする。  これは、だし汁だ。お婆さん曰く、うどんのダシらしい。…しょっぱいのでは?などという疑問を持ちながら1口飲んでみる。すると、塩辛いなんてことはなく、むしろ程よい塩味と、これは…生姜だろうか、体が温まるのを感じる。 それを冷めないように、でも、ゆっくり飲んでいたら、お婆さんがいつの間にか出来上がった物を持って隣にいた。 「さぁさ、出来ましたよ。うちのだしは美味しかったでしょう?さぁ、こっちも冷めないうちに席に戻ってお食べ。」 「はい、ありがとうございます。」  そそくさと席へ戻り、私は渡された箱を開ける。開けた瞬間ミニサンドとしきりを挟んで、揚げ卵が挨拶をしてきた。今すぐにでもがっつきたい気持ちが込上げる。しかし、そんな事はしない。しっかり味わって食べるのだ。 ミニサンドは定番の卵、レタスとハム、そしてとんかつが入っていた。中でもトンカツは、ソースが濃過ぎず衣もサクッとしていて脂っこくなく、食べられてしまった。ミニサンドを食べ終え、次は気になっていた揚げ卵だ。  先程のトンカツの衣はパン粉であったが、それとは違いこちらは溶いた小麦粉だろうか。卵は食べてみると、中身は半熟で黄身がとても濃厚だった。余計な味は付いておらず、でも、しっかりとした味のする、とても美味しい卵だった。  最後に残ったコーヒーを飲みながら、私は外を眺めた。まだ日が昇りはじめたばかりで、辺りは霧が立ちこめ、朝日が当たり、怪しく光っている。そこから数時間が経ちあたりも明るくなり気温も徐々に上がり始めた。 と、車内放送が入る。 『まもなく〜北大路〜北大路〜、終点です。』  駅に列車がゆっくりと止まり、扉を車掌が一つ一つ、開いてゆく。荷物を持って駅に降り立つと、気温が上がったとはいえ、まだまだ肌寒かった。私は、目的の場所に向かうため、駅から出て、バスに乗った。  バスの中は暖房が効いていて暖かく、そのまま睡魔に襲われ寝てしまうのであった。

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