螺旋
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 八月中旬になると中くらいの段ボール一箱にびっしり詰まった教材が送られてきて、早くも勉強に取り組まなければならないと突きつけられた。同梱されている説明文を読んでみると解答はマークシート式、テストも同様だと記されていた。選択肢の中から選ぶ、これは答えが全く分からない問題も正解の可能性があるということで楽かもしれないと楽観的になった。  週一で受ける授業はそのスケジュールを見ると場所が歴史資料館やなぜかスポーツ施設もあった。これは校外授業を意味した、その学校の教室よりもそういう授業が多いのは、せっかく家から近くなったのに意味がないとしかめ面になってしまう。  朝7時に起きて十五時まで学校、この縛りが無くなったことにより暇な時間が多くなった。平日は十七時からバイトでそれまでは何をすればいいのか、本来はもう午前からでも働ける身だが学校が変わりましたなどバイト先には言わない、言えない。黙ったまま卒業までやり過ごすつもりだ。  この空いている時間を使って勉強、課題に取り組むのが通信制の学び方なのだろうが、それを監視する先生はいない。とどのつまりやる気が起きないということだ。この退屈を何とかしたい、そんな時に朗報が届いた。  恭一郎の大好きなバンドが十二月から来年三月までライブツアーをやると発表があったのだ。しかもニューアルバムを引っ提げてのツアーだった。10月にシングルを発売したのちに十一月にアルバム、ライブという流れだった。  楽しみができた恭一郎は舞い上がる、このために働かなければとモチベーションが上がった。  週一回の授業は一緒に受ける生徒は今度、いつ会えるか分からないような人たちで積極的に接しようという空気はなく孤独極まりなかった。  吉川とは九月のテストが終わるまで会うのは止めることにしている。何か楽しみが欲しかった、これでなんとか生きていけると大袈裟ではなく思った。  九月末に行われた補習テストは一日で全てを終わらせる日程だったがとんでもない量であった。前もって知らされていたとはいえ本当にやるのかとは半信半疑の気持ちを捨て切れなかった、やはり中間テスト赤点、期末テストを受けていない穴は大きかった。  出た問題は家でやった問題がそのまま丸写しで出てきたり意外にも恭一郎の楽観視は的外れでなかった。この調子で前半は順調だったが人間、集中力には限界がある。後半は問題をよく読まず半ばやけくそでマークシートを塗り潰していた。その中でもしっかり規定通りに塗るということは忘れていなかった。この短期間でマークシートの塗り方は上手くなった恭一郎。  午前九時から始まり終わったのは午後十九時であった。ちなみに休憩はなかった、科目ごとに時間は決められていなく終わったら次のテストに進めるという自由なやり方だからこそ終わらせることができたとも言える。  最初の関門を潜り抜けた。あれだけ学校を欠席したのにそれが1日で取り戻せるなら安いものだと言い聞かせ疲れた体を鼓舞した。ヘトヘトに歩きながらもやりきった笑みを浮かべ家路を辿る。  十月。その暇な時間を少しでも減らそうと取り組む。高梨から教えてもらったスタジオに行きドラムを叩きに行った。広瀬から勧められたアーケードゲームを少し本気でやってみようとやり込んでみることにした。そして週一の授業が終わった後、吉川に会う。定期券内の吉川がいつも転校した学校の最寄り駅まで来てくれた。暇を潰すには何をするにしてもお金が少なからずかかると思わずにはいられなかった。  十月初旬に発売したシングル曲を買った。レジをやった綺麗なお姉さんから私も好きなんです、と笑顔で言われたのが今日のささやかな喜びであった。  高梨とは休憩中や店のバックヤードでその新曲の話で盛り上がる、ドラムの知識を付け始めたのでちょっと楽器についての話もできるようになり玄人になった気分であった。  十一月。発売されたアルバムは最高傑作呼び声高かった。十月に発売したシングルがアニメの主題歌としても使われファン以外にも曲を聴ける機会ができたことから新規ファンの獲得にも成功した、おかげで十二月からのライブチケットは入手困難なプラチナチケットと化した。その中でも運良く恭一郎は高梨の協力も得て今年十二月と来年二月の二公演をファンクラブ先行予約でもぎ取ることができた。

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