-MEGANE-
-19- 犯人がわかった

 HRの始まりを告げる本鈴がなった頃には、部室にいるのは俺一人となっていた。  つまり、明鏡寺めいきょうじ先輩は教室へと戻ったが、俺はサボリというわけだ。  教室に行く気分にはなれなかった。かといって、そのまま家に帰る気分にもなれなかったので、俺はそのまま部室で時間を過ごした。メガネのカタログを見ることもなく、ぼうっと過ごした。  そのまま昼休憩がやってきて――、腹の虫も鳴ったところで、購買でパンでも買おうかな、でも、クラスメイトに会ったりするのはまずいな……とかそんな風に思っていると、不意に部室の扉が開かれた。 「…………」  扉の方を見てみれば、柑森かんもりが立っていた。俺は思わず、固まってしまう。同じクラスである柑森に目撃されるということは、サボリである身としては、避けなければいけない事態だった。 「柑森……どうして、ここに」 「馬鹿。心配したんだよ、二週間も休んで」  柑森は怒っているようだった。部屋に入ってきた彼女の表情は、やはり怒っていたが、ふっと優しい笑みに変わった。 「でもまあ、良かった。元気そうで。もっとやつれてたりしてるのかと思ってた」  その言葉に、どう返せばいいのかわからずにいると、 「いつから来てたの?」と、柑森は訊ねた。 「朝から」 「うっそ。朝からいるの? それって暇じゃない? あっ、もしかして、また眼鏡のカタログ見て時間潰してたとか? きみだったらありえそう」 「……いや、ぼうっとして過ごしてた」  いつもと変わらない柑森の調子に、俺は合わせることができなかった。自分でもびっくりするくらいぶっきらぼうな声になってしまった。 「そっか」  柑森は笑っていたが、無理して笑っているように見えたのは、多分気のせいじゃない。  やや沈黙があった後、「ねえ、研瞠けんどう」と、柑森は言った。 「なんだ」 「ちょっと話があるんだけど、いい?」 「……別に、構わないが」 「じゃあ、放課後にでも」 「今じゃ駄目なのか?」 「今って……もうお昼終わるでしょ。きみと違って私はユートーセイだから、サボるわけにはいかないの」  時計を見やると、確かに、昼休憩が終わるまで残り十分を切っていた。 「それじゃあ、また放課後」 「ああ」  しばしの別れの言葉を交わし、柑森は教室へと戻って、俺は部室に残った。  ――昼休憩終わりを知らせるチャイムを聴きながら、俺は、朝方の明鏡寺先輩の言葉を思い出していた。 『きみの眼鏡を誘拐し、硝子さんを殺害した犯人がわかった』  勝利の確信にも似た笑みを浮かべた後、明鏡寺先輩はそう言った。  ――そして、次にこう言ったのだった。 『犯人は、きみのクラスメイトであり、きみの友人でもある彼女――柑森千夏かんもりちなつだ』

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