妖精の尻尾
妖精の尻尾

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 朝露が石畳をしっとりと濡らしている。その日エドワードはちょっとだけ早起きをして家を出た。朝焼けに染まる空を見上げれば、家々の煙突から上がった白い煙が空へと溶けていく。あの煙は朝食の準備をしているのだろうか。家々の窓からは、顔を出し朝の空気を吸う者や忙しなく身支度を整える姿も見受けられる。  エドワードがそんな光景を目にするのも、もう数えきれないほどになる。乗合馬車に揺られ大聖堂の近くまでやって来た頃には、通勤客でもう既に人の流れができていた。その合間を擦り抜けてエドワードは、いつもの小さな路地を抜ける。  すると、開けた視界と共にレンガ造りの建物に浮かぶ朱色の扉が見えた。その扉に吊るされたプレートが朝の光を浴びて光る。  眩しさに目を細めながらエドワードが近付けば、そのプレートはまだ裏返しになっていた。  少し早く来すぎただろうか。ふとエドワードは思ったが、今日も彼らに会えるかと思うと気持ちは弾んでいる。  エドワードは温かな春の朝の香りに深呼吸して、店のプレートをそっと表に向けた。

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