作品に栞をはさむには、
ログイン または 会員登録 をする必要があります。

罪悪感が生じている中、 多大に申し訳ないのだが、 隣で腹の虫をキューキュー鳴らしてくれている上に、 土鍋のおこげを貪りながらチラチラこちらの茶碗の進み具合を覗かれる方が食べづらいし気まずいんだよと、 箸と茶碗を勢いよくテーブルに置きたい衝動に駆られるが、 なにせ朝からまともに食べていなかった姉妹。 茶碗一杯で火がついてしまったらしく、 収集するどころか、 もっと食い物を寄こせと腹の底からせっつかれていた。 「本当にペースが全然違うから気にせず先に食べてくれて良いし、 食べ比べは一緒にしたいから私の分を忘れずに盛って置いてくれさえすれば、 本当二人で食べちゃって良いから。早く土鍋から離れて、 水に浸して置いて!」  かぴかぴになった米をこれでもかとスプーンで刮ぎ始め、 変な音を奏でる土鍋を救うためにも次をすすめる他なかった。 「良いって! 土鍋持って」 「ありがとう!」  ドタドタ、バタバタ。 滅多に急がない琴音だが腹が減りすぎて理性が崩壊気味なのか、 美桜と一緒に足音がいつにも増して騒々しくなっていた。 シンクにドン。 ジャーッと水を溜める音はそこいらに飛び跳ねていそうな音で、 フライパンの蓋を取って置くもガチャンと割れそうな音が響いた。 「あぁー……」 「良い匂い」  ここまで生唾を飲み込むのが聞こえてきそうだ。 生活音の騒々しさは一周回って面白さに変わる。 兄姉が多いとそれもまた個性の一つだものねと、 笑みがこぼれた。 姉妹のやり取りを聞きながら律夏はナムルを頬張り、 塩味とごま油を口内にまとわせたまま焼き肉に手を伸ばす。 ご飯を放ればすべてが手を繋ぎ、 喉の奥へ滑り降りていく。 やはりさっぱり食べられる米だなと、 最後の一口で米の香りをさらに堪能した。

応援コメント
0 / 500

コメントはまだありません