「ふぅー」 腹六分。 きっと、姉妹にはほんの前菜でしかない茶碗一杯も、律夏にとってはなかなか堪える量。 しかし、ここで諦めるわけにはいかないと、茶碗を手にキッチンへと立った。 「あっ。ちょうど良かった。これ律夏の分」 口元に手を当て、ギョッとした。 姉妹が手にしていたのは茶碗に半分ずつと、カレー皿にルー、ご飯が山盛りになった二セットずつ。 シンクに置かれていたのは茶碗に半分ほどと、小鉢に入れられたルー。 こういう所は律儀だなと、最後まで一緒に食べ比べすること、味の違いを楽しむことは忘れていないと笑みがこぼれた。 「ありがとう」 「使ったのは洗い桶に入れて良いから」 「了解」 土鍋にフライパン、茶碗やしゃもじ。 それぞれ決まった場所で水に浸り、カピカピを刮ぎ取らなくても大丈夫なようにしているのはきっと、日常生活できちんと教育されてきた賜だろうと律夏は洗い物の心配が減り、いっきに肩の荷が下りた。 「ご飯は足りそう?」 「炊いた米が足りなくなったら、ひとめぼれを炊けば良いじゃない!」 「どこぞの王妃さまのような力強いお言葉ですこと」 「ホホホホ」 カレーと茶碗を掲げると回転しながら高笑いし、自席へ戻っていく。 言うなれば、一人舞踏会だろうか。 「いただきます」 一口ぱくり。 律夏は普段と変わらぬ味に頷きつつも、炊き方が違うことで多少の水分が多めになってしまったことと、少量であれば土鍋で炊くよりもフライパンの方が早く、コツさえ掴めれば美味しいかも知れないと、口内でカレーとご飯を合わせる。 あれだけ騒いでいた美桜の野菜の切り方は煮込んでしまえばなんてことはなかったなと、米とカレーの旨さを噛みしめた。 一方、姉妹二人はと言うと、一瞬で茶碗の中を空にし、もぐもぐ咀嚼中。 「うん。 さっぱりして食べやすいけど、ちょっとフライパンの蓋の水分がべちょっとさせちゃったのは油断しちゃった感があるね」 「けど、お姉。味は美味しいよ」 「今度は律夏の家にお邪魔した時、炊飯器とフライパンで味比べさせて貰おう」 ほのぼのした二人を見ながら佃煮をおかずに、律夏は二人が家でご飯を食べるなら大量に作れるカレーとも思ったが、以前から興味があったルーロー飯、中華丼、麻婆丼かなと頷いた。 ふと、カレーを食べている姿を眺めながら、丼物しか思い浮かばないのはきっと食いっぷりが良いからねと、微笑んでしまった。
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