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「こんな贅沢して、怒られそうだわ」  ボソッと呟いたところで、家計簿の存在を知らない美桜は首を傾げるだけだった。 「六千八百五十三円になります」  野菜、カレールー、飲み物、オヤツ。 肉で感覚が麻痺してしまったのか、琴音まで計算を放棄したが故に、予算を上回っていた。 これだけの金額は一ヶ月中、何日分の予算だったのだろうと額から冷や汗がつたう。 「残念。はい、参加賞ねー」  景品を眺めている隣では、残念賞のお菓子かジュース一本を選ぶか迷い中の人や、残念賞を言い渡される人に絶対に一等を当ててやると意気込んでいる人と、様々な人たちと一緒になった。 一等の商品券三万円分に、特賞の国内温泉旅行も二等の空気清浄機も三等の米食べ比べセットも、まだ当たっていない。 こんなの残念賞まっしぐらじゃんと、燃えている美桜とは正反対に、琴音はレシートを手にしてから冷静になっていき、会場に到着してからは興醒めしていた。 早く美桜に残念賞を持たせて夕食の準備をしなくてはと、福引き券のすべてを渡した。 「ダメ! 半分こ」 「えぇー」  面倒くさい。 実に面倒くさいと琴音は眉間にしわを寄せ、きちんと見ていなかった当たりの色を確認する。 残念賞、白が無限。 五等食器洗い用スポンジ、緑が二百本。 四等洗濯洗剤セット、青が百本。 三等、黄が十本。 二等、赤が三本。 一等、金は一本。 特賞、銀も一本。 出てもでなくても、どうでも良い感じの割合になっているのかなと苦笑いを浮かべている間に美桜は見事なまでの、白。 撃沈しながら参加賞のお菓子を眺める姿を横目に、琴音の順番となった。 「はい、三回ね。白以外が落ちたら、盛大にハンドベル鳴らすから頑張ってねー」  商店街のおじさんが立つ白いテントの奥には福引きを告知するポスターが張ってあり、別紙で隣に今まで引かれた白以外の数が正の字で書かれ、カランカランがきちんと稼働していることを目視しした。 琴音はゴクリ喉を鳴らし、福引きのガラガラのハンドルを握ると一回、二回と勢いのまま回した。 「白、白。はい、もう一回だよー」  他の色が落ちないのではない。落ちなくて当たり前なのだ。 背中のポスターを一瞥し、琴音は深呼吸をはさみ、グッと力を込める。

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