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「大当たりー!」  カランカラン、カランカラン。 盛大な音が鼓膜を揺さぶると、満面な笑みでおじさんは声高らかに叫び、琴音に見えるよう分かりやすくポスターを指差した。 「おめでとう。黄色は三等、米食べ比べセットだよ!」  指先に目を細め見れば、化粧箱に並んだ五種類の米、混ぜて炊ける釜飯の具、瓶詰めされた佃煮、真空で並ぶ薄い他三種。 大当たり商品と参加賞を貰って帰ってねと隣に誘導され、琴音は適当なお菓子を二つ袋に入れて貰い美桜に渡すと、かなり重い米のセットを両手で抱えた。 「お姉、スゴい! スゴすぎるよ!」 「あ、ありがとう」  マシンガンのような賛辞に上手い返しもできず、琴音はすぐ近くの駐輪場に停車したと言うのに、遠方まで足を運んでいる感覚に襲われていた。 自転車の前カゴにダンッと下ろすと、やっと着いたと肩で息をした。  玄関の鍵を美桜に預け、琴音は最後の力を振り絞り箱を抱えると、上がり框に脛をぶつけながらゴールした。 大げさと笑う美桜に箱を指差す。 またまたと笑いながら手を伸ばすと、目を見開き勢いよく全身で琴音を見た。 「重っ!」 「でしょう!」  買い物袋をすべてダイニングテーブルに置き、琴音はすぐさま玄関を施錠した。 腹ぺこの買い物は魔物が住んでいることを実感しながら琴音は一つ、一つ食材を冷蔵庫に押し込んだ。 「これ食べよう!」 「もう?」 「うん! だって、せっかくお姉が当てたんだから、食べようよ」  福引きを一番に楽しみにしていた母が不在の中、食べてしまっていいものなのだろうかと思いながらも、炊飯器は空。 上手い具合に一から米を炊かなければならない状況で、琴音は時計を確認した。 「召喚するか」  時刻は三時過ぎ。 あと数時間で夕食時間だが、姉妹二人は昼食を食べていない。 相手のことに配慮している場合ではないと、すぐさま電話を鳴らした。 「どういう状況なのかしら?」  幼なじみで隣家に住む、律夏。 四人兄姉の長女で世話焼きな性格で、琴音の親友でもある。 状況把握は得意分野ではあったが、屍の如く突っ伏しているだけでは当然理解不能であった。 「腹が減った……」 「……はっ?」 「コレで、美桜に旨いものを……」 「律姉。お願い」  リビングテーブルに乱雑に広げられた食べ比べ二合セット。 北海道産、ゆめぴりか。 青森県産、青天の霹靂。 秋田県産、あきたこまち。 山形県産、つや姫。 新潟県産、コシヒカリ。 小包にされた五種類の米を一つずつ手に取り特徴を黙読していく。 姉妹はテーブルに突っ伏すのをやめ、玉ねぎ、人参、ジャガイモ、挽き肉、カレールー。 そっと置いていかれる食材たちには目もくれず、律夏は釜飯の具を手に取った。 「あきたこまちとコレで良いじゃん?」 「美桜の気分は、肉なの」 「あぁ……」  同梱していたのは、五目ご飯。 せっかくならアレンジに鶏肉をいれてもと思うものの、買い物で買っていたのは残念ながら焼き肉色が強く、冷蔵庫に鶏肉はいなかった。

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