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「フライパン借りるね」  炊飯器につや姫、土鍋で青天の霹靂、フライパンで岩手県産、銀河のしずくが炊かれることとなった。 「銀河のしずくって、食べ比べセットに入ってたっけ?」 「私も試食してみたくて、今し方家で普段食べている岩手県産のお米を三合ほど持参しました。琴音たちが普段口にしているお米ではないし、他県のお米だから食べ比べとしても成立しているし、別に良いよね」  満面の笑みで説き伏せられ、琴音は三種類の米研ぎに勤しむ。 ふと、いつも口にしている米はなんだろうと米袋を探した。 「ひとめぼれ、宮城県産。へぇー」  きっと、自身で購入するようにならなければ銘柄を知ることも、気にすることもなかったと、琴音は様々な品種が都道府県ごとに存在しているのだなと深く感心した。 「お姉、野菜の切り方あってる?」 「ん?」  覗いたまな板には飛び散った玉ねぎと、乱切りと呼ぶには乱雑すぎるバラバラの大きさな人参に、ピーラーを先に借りたお礼のつもりなのかおかしな形になってしまった皮を剥いていないジャガイモが転がっていた。  ふんす、ふんすと鼻息荒く、上出でしょうと言わんばかりの表情に、琴音は苦笑するほかなかった。 「あぁー……いっぱい手伝って貰ったから、美桜はリビングで休憩してて良いよ」 「福引きで貰ったお菓子食べても良い?」 「もちろん」  引きつった笑顔で見送り、琴音は一種類ずつをそれぞれ皿にいれ、当初の予定より些か細かくなってしまったジャガイモの芽取りからスタートした。 「あらあら。面白いカレーになりそうね」 「面白くないから」 「まだ時間がかかりそうだから、コンロ使うわね」 「へーい」  料理を始めたとは言え、独立させるには早かった。 指示なしではまだ工程や判断が難しいことを学び、琴音はチェックし終えたジャガイモを耐熱ボールに入れてからラップし、電子レンジにお任せコース。 大きめの鍋を棚から選び洗うと、ガスコンロにのせた。 「フライパンで炊くお米はもう火にかけてるの?」 「奥の三口目で炊いてるよ。私は左側で焼き肉にも合うお供作るから」 「やったー」  ボコボコ音を立てながら沸き立つ鍋に水洗いしたほうれん草をいれ湯がき、取ったあとのお湯でもやしを茹でる。 半分くらい残っていれば人参もと思っていたようだが、乱雑切りを目の当たりにして、戦意喪失していた。  キッチンペーパーでほうれん草の水気を拭き取ってから一口大に切りボールに放ると、ごま油、塩、ニンニクを混ぜ、皿に移してから白ごまを振る。 ザルにあげていたもやしもボールに移し替え、こちらもごま油、塩、ニンニクを混ぜ合わせ、白ごまを振った。 「匂いが、美味しい」 「ありがとう」  あっという間にナムルが完成し、琴音は玉ねぎ、挽き肉、人参、ジャガイモを炒めながら感嘆の声をもらした。

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