Re:とあるMr.brightside?
日常の豚汁 2

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 まずは材料を広げる。豚こま切れ肉。大根、ニンジン、ゴボウ、長ネギ、こんにゃく。  まずは各種材料を食べやすいように包丁で切り、こんにゃくは手で一口大にちぎっていく。  それが終わったら、鍋にごま油を軽く垂らし、豚肉を中火で鍋に入れ炒めていく。じゅうじゅうと肉が焼ける音と匂いがキッチンに満ちていく。いい色に豚肉がなったら軽く、醤油を回しかける。醤油の焦げる香ばしい匂いがし、食欲をそそる。亜希は口笛を吹くそうな軽やかな気持ちで料理を進めていく。ニンジン、ゴボウ、こんにゃくの順に鍋に投入し、ある程度炒めなじんだら、大根と水を鍋に投入し、それなりの強火で煮ていく。最初は静かだった水面がゆっくりと沸騰し、ぐつぐつと音を立てて、煮立っていく。  姉はメイド服姿をする自分を、本人の自由だからと許容し、許してくれている。それはすごくうれしい。そして、それと同時にそれはこの日本では普通ではないということも、今まで生きてきた亜希にはわかっている。  メイド服姿で外を出歩いていると、亜希は様々なことを感じる。好奇の視線。そして、たまに視線どまりではなく、心ないことを言われたりする。別に亜希は鋼鉄の心臓の持ち主ではない。なので、そういった視線や言葉にさらされるたびに、心はうろたえ傷ついていく。  でも、だからこそ、そんな自分を許容し許してくれる存在は、確かな救いで心強い味方だ。  そんな心強い味方の姉に自分ができることはなんだろう。あまり、勉強が得意ではない亜希にはよくわからない。でも、姉が亜希が提供できるもので、姉が喜んで食てるものがある。それは料理。おいしいと喜んでくれる料理。それを提供すること。それが亜希の最大の味方である姉に対しての亜希の貢献であり、恩返し。亜希はそう思っている。だから、亜希は穏やかな気持ちで料理を進めていく。ゆっくりと、この温かな気持ちが伝わるように。  大根に火が通り、透き通るのを確認したら、味噌を溶かし最後にネギをちらし、完成。  亜希は軽く、息を吐き、姉宛てに晩御飯のメッセージをこしらえ、冷蔵庫の鶏ハムで軽く、残り物のレタスなどと組み合わせ主菜兼サラダを作り、お皿にラップをすると冷蔵庫にしまうと、自分が仕事に行く準備に取り掛かる。  キッチンでは、鍋から豚汁のいい香りが立ちのぼり、ゆっくりと穏やかな時間が過ぎていく。こんな時間のように、穏やかに日常が過ぎていけばいい。メイド姿の亜希は、心から、そう思う。  「行ってきます」  誰宛でもない、挨拶をいい亜希は部屋を出た。穏やかな時間はゆっくりと過ぎていく。ありふれた日常。そうこんな感じがメイドの日常。  ゆっくりと、豚汁の鍋から湯気が立ちのぼる。そのそばのダイニングテーブルには簡潔なメモ書きのメッセージ。  「温めて食べてください」  そんな感じで時間は過ぎていく…。

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