Re:とあるMr.brightside?
ハジマリのハッシュドビーフ 1

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 幸村 楓はお腹が空いた。今日は大学の必修講義が1限目と2限目に連続であり、もうギリギリまでさぼっていたのでさぼれず、そして、寝坊したので朝食抜きだった。普段なら、自作のお弁当か学食で昼食は済ますのだが、先に述べたように寝坊してお弁当を作る時間はなく作っていない。だったら安く済ますために外食するにしても大学の学食で済ますのが無難なのだが、今日は人でごった返す学食の食堂の気分ではなかった。なので、行きつけの例の店に行くことにした。  楓の通う大学は都心の駅から少し離れたところにある住宅街の一角にあり、なので大学から駅までの道すがらには様々な店が乱立している。大学を出て駅に向かうと、最初は一軒家の住宅が立ち並ぶだけなのだが、駅に近づくたびに少しずつ様々なお店が顔を出す。その中にはイタリアンや中華、和食など様々な種類の料理店がある。そして、楓の目当てのお店はそんな中の様々なテナントの入ったビルの一階にある。  その店舗は昔は少しこじゃれた内装のラーメン店だった。しかし、少し前にラーメン店が撤退。そこを現在の店主が脱サラし、居抜きの形で入り、経費節約でD.I.Y.で改装した。そして、現在はカウンター席を中心に、カウンター席の後ろに二つの4人掛け席のテーブルを設置したこじんまりしたカフェになっている。カフェの名前はJAZZのスタンダードナンバーとして有名な曲名を少しいじった名前。その名も「Your Funny Valentine」。  時刻は2限目の講義が終わって少し。つまり、お昼時。大学から駅までの道のりは外食のために出歩くサラリーマンやOL、そして、楓のような大学生などで溢れてにぎやかだ。もう今日は大学のとっている講義がなく、ごはんを食べて家に帰るだけなので、楓の気分も足取りも軽い。一定のリズムで歩を進めると、駅までの大通り沿いに立ち並ぶビルの一角の一階のテナント。木目調の扉と、わざと味を出すためにサビさせている鉄の看板が目に入った。ついた。ここが「Your Funny Valentine」だ。  楓はお店の扉を開いた。すると、扉につけられたベルが鳴り、店内に来客を告げる。  「いらっしゃいませ」  店内に入ると、落ち着いた声と淡い笑顔が楓を迎えた。そこにいたのは、一人の女の子。19世紀末頃のイギリス。ヴィクトリア朝時代の古き良き時代のエプロンドレス姿-つまり、メイド姿の女の子。  「楓、久しぶり。いらっしゃい」  「久しぶり。元気そうだね、亜希」  そう言葉を交わすと、このカフェの店員のメイドー新藤亜希は柔らかく微笑んだ。

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