遊ばれ女と婚活
LGBTQはデリケート2

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 ベッドの上の翠は脚を投げ出して、ただ、ぼんやりとペテキュアの乾きを待っている。  部屋の灯りは着けていない。  暗闇にも、もう目が慣れてきている。  すると枕元のスマホが鳴り出した。    深夜近くの着信は有希子からだ。  有希子は少し酔っている。    要件などはない。  話は惚気だ。  喜多はああ見えてジャズが好きでピアノを弾くのだと自慢する。  そして今夜は「チャップリン」で開催されたジャズライブに行ってきたそうだ。  ‘自分’が連れて行った『チャップリン』が甚くいたくお気に入りだと、ご機嫌だ。  それで翠に電話してきたという。  脈絡は分らないが女とは、そんなものだ。 「先輩がお酒飲んでいて驚いたけど、長年付き合ってた彼女と別れたからだって」    今度は太一の話だ。 「彼女……いたんだ……」   取り敢えず返事を返す。 「らしいね。だから翠と上手くいかなかったわけよ」 「どんな人かな」  力のない言葉が続く。 「私、噂話は信じないんだけど……隠してるみたいだったって」 「客商売だからね」    乗り気のない翠に気がつきもしない。 「だろうね、それも高校時代からの付き合いみたいで……そういえば、あの頃も本命は隠していたじゃん」    そうだ、そうだ、と有希子は一人小声で納得している。 「いつ頃かな……」  翠の独り言を有希子が拾う。 「丁度、私たちが行った頃になるのかな~三ヶ月ぐらい前から別れ話をしだして、二ヶ月前には完全に別れたんじゃないかって、話」  誰が情報源なのか分らないが有希子は相当な噂好きだと思う。 「どうして別れたのかな」 「煮え切らないから、彼女が見限ったみたい」 「……」 「ヘタレなんだよ。翠は知らないだろうけど太一先輩、ロングヘアーだったんだよ。その彼女と拗れだした頃に髪を切ったり、染めたり、髭伸ばしたりで結構なジレンマだったんじやない。男らしく自分を変えたいのよね」  そういえば……と、翠も高校時代の太一を思い出す。  どちらかというと、アイドル。  やんちゃな物言いと可愛い顔とのギャプが受けていた。    けれども最近のアイドルは年齢と共に渋い系に変わる人が多い。  再会したときは気にもしなかった。    昼間の洋子の話とリンクさせると、一つの仮説が脳を支配する。    少し頭を整理したい。  ペテキュアは乾いている。  翠は指の腹を爪に滑らす。 「悪い有希子、眠いわ」 「あっそお……また店に行くわね、お休み」 「お休み」    考えを止めて寝むりたい。  このままでは突拍子もない答えに辿り着いてしまう。  だからといって気持ちが昂ぶって眠れそうもない。    体を投げ出したベッドは今日の翠を重く感じているのはずだ。    翠は自分の考えを受け入れられない。    洋太郎と太一はゲイなのではないか……    小鳥の囀りで朝を迎えるのは絵本のお姫様か避暑地のセレブ。  翠はからすの鳴き声だ。  昨夜は何度トライしても眠れなかった。    まだ早いが二度寝は危険を伴う。  運悪く今日は早番だ。    洗面台の鏡に映る顔に隈が出来ている。  時間も早いことだしと、翠は朝風呂に浸かることにした。    夜はろくな事を考えない。  翌々考えればあり得ない話だと翠は気がつく。    太一は翠を抱けるのだからゲイじゃない。  翠は馬鹿のことを考えたと自嘲する。    洋太郎と太一は気心の知れた先輩、後輩で、洋子の話は本人も曖昧だと行っていた。  記憶違いか聞き間違えだ。  翠は暫くはこのままでいいと改竄をすます。  そしてザブッと音を立て湯船から立ち上がった。    シミの無い白い肢体はまだ湯を弾く。  翠は思う。  結婚までプラトニックも悪くない。    翠は下生えを探りだし小さな粒を撫でさする。    自分は洋太郎に大切にされているのだと。  洋太郎との中は順調だ。    そして滑らした中指が奥まった場所に潜り込んでいく。    空いた手の指先は無意識……  乳首を弄りだせば呆気なく気怠い。    少しずつ自分が盲目になっていくのに翠にはもう止められなかった……

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