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「おやっさん……」 「なんじゃ、村雨?」 「なんで、その……いきなり新入りなんて呼んだんですか? しかもよりによって人間の子供って」 「子供じゃないぞ、正月くんはあれでも18歳じゃ」 「えええ!?いや、まあな……それでも俺たちと比べりゃまだまだ子供も同然じゃないですか」 「呼んだのはわしじゃないぞ、タエちゃ……いや、社長じゃ。わしはあの子の異動にあたっての手続きを裏でちょこっとしたに過ぎんでの」 「(裏って……)マジすか、てっきりおやっさんの一存だと」 「ふふ、何か深い理由があるのかも知れんな。あのタエちゃんだし」 「……よくわっかんねぇなあ」 「そうか村雨? ならばヒントをやろう」 「え……?」 「あの子のフルネーム……いや、本名か。漢字に目を通したか?」 「えっと、シノダ マサツキ……志乃田正月……あ!!!」 「わかったか、そういうことじゃ。お前たちみんなで力を合わせてあの子を教えていくのじゃぞ」 「なるほどな……しっかし全然そういうやつには見えなかったぜ」 「ああ、確かにその通りじゃ。お前がそう思うのも無理はない。実はあの子は早いうちに親を亡くしておる。それに兄弟姉妹もおらぬし、いわば天涯孤独の身じゃ。お前たち兄弟と同じにな」 「あの、おやっさ……いや社長。あんまり弟の話はしねーでもらえますか? あいつとは……その」 「ふむ……まだ駄目か」 「だからこの駅の勤務も、アイツとできるだけ顔を合わせない組み方にしてくれたんだし、こればっかりはもう……」 「……さて、そろそろ戻らないとな。カミさんがツノ生やして待っとるわい」

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