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 ぼくはそれに手をのばす――どうしてそんなことをしたいんだろう? さあね、とってもきれいだからかな? ノンキなこといってるなよ。ぼくは死ぬかもしれないんだ。そんなことしてる場合じゃないだろ。  でも、ぼくはそれを見たい。ふれたい。知りたい。ただその気持ちだけがある。  君にはわからないかもしれないな。世界にはぼくとそれだけがあって、ぼくはどうしようもなくそれを求めてるんだ。ぼくはそれに向かってまっすぐに手をのばす。  もうすぐだ。  この世にはこんなにきれいなものがあったんだな。  それはきらきらと光っていて……。    ――ぼくは湯船の中でゲホッとむせて、のどから水を吐き出した。  いつものお風呂場、いつもの浴槽だ。ぼくは湯船に入っていて……溺れかけたのかな? まさか、眠っちゃったとか? ぼくは何度もセキをして、頭をハッキリさせようとした。  あの銀色の光、あれは何? 光るあれ、その名前は? だいたい、ぼくと同じ顔をしたあいつは何? なんで急に現れたの?   よくわからないことがたくさんある。だけどあの水の中で見た光――それはとってもきれいなものだった。  翌日、もちろんぼくは学校にいく。休日でもないんだし、当たり前のことだ。  するとそこでは悪夢のようなことがはじまっていた。  校門前では、子どもたちが笑顔で殺し合いをしている。みんな笑いながら、相手をガツガツと石で殴ったり、あるいは何人かで誰かの首をはめたりしている。  その中に、ぼくの友だちがみんないる。  アキラが、ケンタとリョウから頭をぼこぼこ棍棒で打たれている。  もちろんこれは夢なんだ。ぼくはみんなの方に近づいて「おはよう」といった。  ケンタとリョウは、どろっとした目でこちらをにらんだ。アキラは、頭から血を流してとっても苦しそう。  あれ、なにその反応……。  もしかして君たち、そんなこと本気でやっているっていうの? もうまいったね……ケンタがじりっとこちらに近づいてくる。  ぼくはこわくなって、一目散に教室の方へと走った。だって、とりあえず授業があるんだからさ。 「だから、現実を見ろって」  またあいつだ! 廊下のガラス窓から声が聞こえてくる。 「ウソつき! これ、みんなおまえがやったんだな?」 「勝手におれのせいにするなよ。おまえが今まで何も見ていなかっただけさ」 「いいかげんなこというな!」  ぼくはそう叫んで教室の扉をあけて――そのなかは血まみれのぐしゃぐしゃ。

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