昼と夜の子どもたち
ハーピーとわたし 13
「あら、眠いの? そうね、今は寝るといいわ……今度、迎えに来てあげるから」 「いつ?」 「――海があなたの涙でいっぱいになった時に」 それはとてもつらい真実だった。 私には、これからもひどいことが数限りなく起こるのだろう。 パパはしばらくは反省したような素振りを見せるかもしれないが、またそのうちに私の部屋にやってくるだろう。それは私が成長するごとにますますひどくなっていく。 そしてママはあらゆる手段を使って、そんなことなんでもないのよっていうメッセージを送ってくる。ニュースを見て「レイプ事件? あら、そんなの笑って股開いてあげりゃいいじゃないの、ねえ? 私だったらそうするわ」とうそぶく。 そして毎日美味しいお弁当を作って、にこにこしながら私にわたしてくれる。 父も母もあまりにも弱く、真実を知ることは永遠にできない。 病室に誰かの足音がひたひたと近づいてくる。どうせあの二人だ。窓に鉄柵をつけようかどうかなんて、どうでもいいことを話し合っているに違いない。 私は「このこと」があったから、また「このこと」があるといけないから、「このこと」を起こしたおまえが悪いのだということにされて、部屋から鍵を取り外される。 けれどかまわない。そのたびごとに海は近づいてくるのだから。 いつか私はまた再び海の上に顔を出した満月を見るだろう。自分でボートを漕いで、ハーピーと船出するだろう。そして彼女と一緒にたくさんの美しい世界を見るのだ。 私はその日を夢見て、今は目を閉じる。 (おしまい)
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