それは本当に恐ろしいことだった。 みんなは私を認めないし、実花だってそうだ。私は本当は、ずっとこの暗い世界にいたんだ。この世界に一人きり。 私は世界中の人から嫌われてるんだ。ママにも、みんなにも、そして実花にも。 私は私がきらい。 大きらい。 こんなわたし、今すぐ死んでしまえばいいのに。 ――あっ、思い出した。 私はずっと、私に向かって、鏡の中の私に向かって、同じ言葉ばかりくり返していた。 「死ねばいいのに」って。 この私じゃなければ……。 「どうして私は私なんだろう。こんな私じゃなければ、もっと好きになれるのに」 「ねえ、そんなこといわないでよ。あたし、もっとがんばるから。みんなに好かれるような、うまくやっていけるようなあたしになるから」 「死んじゃえばいいのに、あなたなんて。だってそうでしょ、誰からも愛されない、私からも愛されないあなたに、何の価値があるの?」 「じゃあ、あたしがあんたの願いを叶えてあげるから、だから――だからあたしをきらわないでよ」 ――そう、私は実花を殺したかった。 ほら、願いが叶ったじゃない。実花はもうすぐいなくなっちゃうよ。 どうして私は私なんだろう。こんな私でなければ。私さえいなければ。こんな子と付き合うのなんて、もうやだ。 もし学校の屋上から飛び降りたらどうなるだろう。もし台所の包丁で手首を切りつけたらどうなるだろう。もし私が車の前に飛び出して体がぐしゃぐしゃになったら。 ……そうしたら、みんな、一瞬だけでも、私のことを思い出してくれるかな? 私は授業中、そんなことばかり考えていた。 そう、私はずっとずっと前から、私を殺したかった。 だって「私」がいなけりゃ、すべて解決でしょ。 ああ、どうか、今すぐ私が消えてしまいますように。 ――それが、私が願ってきたことだった。 「実花、ごめんね」 私は、実花がかわいくなくたって、勉強できなくたって、好きだよ。私が守ってあげるから、だから――二人で一緒にいようよ。
コメントはまだありません