Scene 4

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乗車賃を支払ってタクシーから降りる。そのまま電車に乗って地元に帰ろうかとも思ったが、ホッとして緊張が解れるとお腹が減っている事に気付き、せっかくなのでラーメンを食べて帰ることにした。  外にある券売機で食券を買って店内に入る。僕を出迎えた今風の大学生らしき店員に食券を渡し、案内されたカウンター席に腰掛けた。暫く待つ注文した商品が届く。家系特有の肉厚のチャーシューから口いっぱいに頬張った。 「あの、すみません。憲一って知ってますか? ここで働いてたと思うんですけど」  麺を半分ほど啜り終えた頃。隣の客が食事を終え、先ほど僕を案内した大学生らしき店員が食器を片付けに来たタイミングで声を掛けた。  すると男はあからさまに怪訝そうな表情に変わった。 「何すか。憲一さんの知り合いすか」 「ああ。地元の友達なんだ」  アルバイトらしき大学生は手に持っていた器を音をたてて置いた。 「あの人ならクビになりましたよ」 「え、どうして?」  アルバイトらしき大学生は口元に手を当てて小さく笑い声をあげる。 「どうしたもこうしたもないですよ。あの人、一日に三回も客にラーメンをブチまけたんですよ。それで店長が怒ってその場でクビ。で、その後、荷物とかそのままだから連絡したんですけど、一向に返信がないんですよね。ったく。いい歳して。逆ギレして逃げるなんて、何考えてんすかね。」 「憲一から連絡が来なくなったのはいつ?」 「えっ。ああ。確か三ヶ月くらい前からですけど。てか、貴方、友達なら言っておいてくださーーってちょっと、何処行くんですか!」  人生は自分の思った通りにいかない事の方が多い。と僕は痛感する。  大学生らしきアルバイトが言葉を言い切る前に僕は店を飛び出した。ラーメンは半分残ったままだった。  ***** 「なあ、剛。剛! どうしよう。ケンチ、バイト先にも来てないって。どうしよう」  食べかけのラーメンを残し、店を飛び出した僕は、店の前で見つけたタクシーに飛び乗り、また剛に電話を掛けていた。 「そっかぁ。流石に心配だな。分かった! 俺もこっちで手掛かり探してみるよ。また進展あったら連絡頼む」  そう言って剛は電話を切った。  剛ともケンチと同じくらいの頃からの付き合いだった。情に厚く、人の気持ちを決して無碍にしない。仲間の中では兄貴的な存在でだった。  そんな優しい剛のことだから、まだ半信半疑かもしれないが、その半疑を確信に変えるためにきっと動いてくれる。  その結果何も無ければそれでいい。「だから言ったろ」と剛が呆れた様子でため息をつく。「余計なお世話だよ」とケンチが照れ臭そうに目を逸らしながら笑う。  僕はそんな未来を想像しながらある場所へと向かっていた。

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