諦念
四話 虚しさの果てに...
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 とにかく、この虚無。  わからへん。  とにかく、ただ虚しいのです。  虚しくてしょうがないのです。  ああ阿保らしい。  こんな事、どうでもええ事です。  わざわざ人に説明するに値しない、極めて個人的な観念に過ぎません。  自分は人よりずっと物事を深く考えている?どうでもええですそんな事。  自分は物事の本質を見極める力が優れている?どうでもええです下らん。  むしろ自分に人より優れていると思われる部分はまるで見当たらない。  それもどうでもええです。  そんな事よりも、生きる事。  ただ、生きればええんです。  生き抜けばええんです。  最近、ウチはそういうふうに考えてます。  虚しくても生きる。  死にたくても生きる。  何にも期待できなくとも生きる。  虚しさとか、死にたいとか、そういうものは、もはや自分にとっては靴みたいなもんやと思っとります。  つまり、当たり前の事なんです。  とりたてて騒ぐ事でもないんです。  今更靴を履く事に疑問なんて持たへんでしょう。  そんな程度の事なんです。  ウチは生きる中での様々な事を諦めています。  それは哀しい事でもないんです。  そんなものなんです。  ウチという人間にとっては。 「宿命」と言えば厳粛に聞こえますけど、それがウチに定められた、この先もず~っと続いていくであろう「生活」というものなのではないでしょうか。  即ちウチはこの宿命を、この「生活」というものを受け入れたのです。  独りの生活。報われへん生活。幸福でも不幸でもない生活。虚しい生活。時々死にたなる生活。全く期待でけへん生活。何にもならん生活。頼りない生活。心細い生活。やりきれへん生活。 (もっとも全ては、己の脆弱な精神からくる「心の貧しい生活」なだけなんかもしれません。そう考えると自嘲すらできません)  これがウチの生きる、そしてこれからも生きていく世界なんです。  ウチは、今はこの世界で全力で生きようと思ってます。  たとえ一生報われなくとも、懸命に生きていこう思ってます。  たとえ一生愛されず孤独だとしても、全身全霊で生きていこう思ってます。  一人野垂れ死ぬ事が決定していても、最後まで必死にもがいて生きていこう思ってます。  虚しくても、生きます。  死にたくても、生きます。  どうにもならずとも、生きます。   ウチは本気で生きます。生きる事に、全てを捧げよう思います。  自殺ではなく、使いきる。  死ぬのではなく、やり尽くす。  生ききる。  燃やし尽くす。  ウチは、生きて生きて生き抜いた果てに散りたいのです。  それは見栄でもプライドでもなく、そこまで生きてみたいだけなのです。  虚しいからこそ、死にたなるからこそ、ギリギリまで、本気で、必死で、一生懸命生きたいのです。  ウチは独りでも、人と人との心の触れ合いを見つめ続けたい。  独りでも、愛情というものを表現したい。  たとえ最後の最後まで何にもならなくとも、最後の最後まで、何かあると信じる。  だから、やる。  最後まで、何かをやる。  もしウチの事を本当に応援してくれる人が一人でもおるなら、その人の為にだけでも、ウチは歩き続けたい。  どんなにどん底に落ちても、義理と人情だけは守り通したい。  ウチは、青臭いのかもしれません。  哀しいロマンチストなのかもしれません。  センチメンタルを気取っているのかもしれません。  ただ痛い奴なだけなのかもしれません。  いずれにせよ、もうええんです。  とにかく、生きていくだけです。  一生懸命生きていくだけです。  こんな話、誰がオモロイ思うのか。  全く、自ら呆れます。  もうウチは語りません。  ウチはひたすら生きるのみです。  こんな話に時間を使うんはもったいないったらあらへん。  こんな話をしとる暇があるなら、やれ!です。探せ!です。創れ!です。夢中になれ!です。没頭しろ!です。  何より、生きろ!です。  そしてウチの本当に創りたいものは、こんな小説ではないんです。  これじゃないんです。  ウチは、本当は物語が書きたいんです。  それは、ウチの中にある混沌としたもの全てを注ぎ込んだ、人間の本質をえぐるような、しかしそれらをおもしろおかしくユーモアと笑いで包んだ、読み終わった後、不思議にほっと温かくなるような、思わず笑顔がこぼれ、人も自分も許し愛せるような、そんな物語です。  そんな長編小説を書きたいのです。  それがウチの「この世に生きた爪跡」になるのです。  まあ、もうええでしょう。  みなさん、長々とつまらない話を失礼しました。  最後まで聞いていただいた事、心から感謝します。  ウチはこれから残りの人生、全てを懸けて、全力で生きていきます。  では、さようなら。  またいずこでお会いできるんを楽しみにしとります。 [完]
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