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 駅前のコンビニに入ると新商品は売り切れていた。まばらで代わり映えのしない陳列棚ラインナップに目が滑る。かといってダッシュで終電に駆け込むような人間を待っていてくれるのはこの店くらいだ。  はぁ。買い置きのラーメンでいいか……  帰り間際にお優しい上司編集長から賜ったお言葉をぼーっと思いだす。 『飯倉ぁ、お前、なんでどれもこれも売れねえんだよ。次ポシャったら、わかるよな?』  同僚が担当した本がマガジンラックにあった。SNSで火が付いたのだ。発売直後はそうでもなかったものが、もう何刷めだったか。コンビニにまで置かれるようになっていたとは……鼻の奥がツンとする。 「今時、なんでもネットでタダ読みできるんだ。話題性でもなきゃ金出してまで買おうなんて誰も思わないんだよ」  ラックから顔をそむけると超辛口ビールに目がいった。それをカゴに投げ込み、ギョーザのパックを手に取ってレジへ向かう。  外に出るとガード下の占い師と目が合った。心が弱っているせいなのか。いつもそこにいるのは知っていたから意識して目を逸らしていたのに。 「ああ、やっと見てくれた。お金はいいから、ちょっとこちらへ」 「え、あ、はぁ」  まるでずっと呼びたがっていたかのような口ぶりだった。普段なら無視アンド早歩きでやり過ごすはずのこんな呼びかけに、なぜかふらりと足が向く。 「よかった。あなた、よくないものに憑かれているようですよ」 「へ?」 「ウンマリャムニャ……ハァっ!」  耳を疑う言葉を訊き返す隙もなく印を結んでもごもごと唱えだす占い師。  明らかな右側の違和感に横を向くと、俺一人のはずなのにそこには。 「だ、誰! え? その恰好……!」  レトロな袴姿の美少女が立っていた。

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